シネマヴェーラ渋谷でフリッツ・ラング監督特集が行われていた。そこで『死刑執行人もまた死す』を見た。この映画についてWikipediaでは、
舞台はナチス・ドイツ占領下のチェコスロバキアのプラハ。「死刑執行人」の異名でプラハ市民に恐れられていたベーメン・メーレン保護領の副総督ラインハルト・ハイドリヒの暗殺(エンスラポイド作戦)をきっかけに、秘密警察ゲシュタポはチェコスロバキアの名望家らを人質に取るなど、目的のために手段を選ばないやり方で暗殺犯の捜索に躍起になる。そんな中、副総督を暗殺した男ヴァニヤック(虚偽の名前)をかばったマーシャ・ノヴォトニーは、自分がかばった男のために、大学教授の父親が人質に取られたことを知り、ヴァニヤックこと本名スヴォボダに自首を懇願し、父の命を助けようとする。しかし、ゲシュタポの残忍な取調べや人質にされた父との面会の際に父が語った「自由は闘って勝ち取るものだ」という言葉によって、自由を求める一市民としてスヴォボダらとともに活動していくのだった。
フリッツ・ラングの傑作の誉れ高い作品は2時間14分の長さを、観客の緊張を全く緩ませることなく最後まで引っ張っていく。ナチのゲシュタポに対するチェコの地下組織の戦いを描いて。見事な脚本と演出だ。
とにかく圧倒されて見ていた。傑作の名に恥じないのは事実だ。見終わって2、3日経つと少し反省も生まれてきた。ゲシュタポをうまく出し抜いているが、ゲシュタポの怖さはこんなものではないのではないか。サルトルの「壁」も拷問にあって口を割る話が書かれていたし、日本の特高警察の小林多喜二への拷問も忘れられない。スターリンが仲間を粛清したときも拷問の跡がはっきりついていた。テルアビブ空港乱射事件でイスラエルのモサドに捕らえられた日本赤軍の岡本公三は終身刑に服していたが捕虜交換で釈放された。しかしテレビニュースに映し出された岡本はほとんど廃人のようだった。それはモサドの激しい拷問を想像させた。岡本は真面目な学生だったと鹿児島大学農学部林学科で教えていたY教授が言っていた。
「壁」で登場人物の一人が言っていたことが忘れられない。平和な時代に生きる連中は自分が卑怯者であることを知らずに済んでいると。
シネマヴェーラ渋谷のフリッツ・ラング特集は終わってしまった。この1本しか見なかったことがとても悔やまれる。
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