eitoeikoの青秀祐展「弾頭の雨が降る夜に、少年は空飛ぶ夢を見る。」を見る

 東京新宿神楽坂のeitoeikoで青秀祐展「弾頭の雨が降る夜に、少年は空飛ぶ夢を見る。」が開かれている(6月30日まで)。青は1981年多摩美術大学絵画学科日本画専攻を卒業し、2015〜2018年には多摩美術大学美術学部絵画学科日本画専攻非常勤講師を務めた。2010年と2011年にここeitoeikoで個展を行い、また青森県立美術館や国内外の美術館などのグループ展に参加している。


巡航ミサイルと空対空ミサイル

500キロ爆弾と練習弾

戦闘機ファントム
 青は戦闘機をモチーフにして作品を作っている。今回は巡航ミサイルと空対空ミサイル、それに500キロ爆弾と練習弾を布で作っている。巡航ミサイルが4m、空対空ミサイルが3mでどちらも実物大だとのこと。しかし布製なので柔らかい。
 また画廊の中央に人型の立体が置かれ、これは青本人から型取りしたFRP製だという。もちろんこれも原寸大で、青がファントム戦闘機に扮している。DM葉書の文章より、

戦闘機というモチーフを通じて私は現在を観測する。平和と隣り合わせの暴力性、日常と非日常、古さと新しさ、大人と少年性など、既存の文脈から普遍性を取り出し、変成し、更新している。兵器と言う存在は、徹底的にシリアスだ。それらが持つすさまじい暴力を、身をもって体感したことはない。時折様々な媒体を通じて荒ぶる力を見せつけられ、爪を立てられた気分になっているだけだ。しかし、その佇まいは私の心を鷲掴みにして離さない。
世界を見渡すと、数多くの人間が同じようにその危うい魅力の虜になっている。むしろそういった人達が偏愛の果てに生み出したものに囲まれる中で、私もそこに仲間入りしたといった方が正確だろう。カッコいい、とひとことで言ってしまえばそれまでの話だが、美術家としてはそこに発生する力学を解明する必要がある。

 布製のミサイルや爆弾などだが、細部の造りについては作家のこだわりが強く、記載されている文字や細部などかなり正確のようだ。制作について質問すると、型紙を作り布を購入して自分でミシンを踏んで作ったという。
 自身を型取った人型の頭に「DO NOT PAINT」と書かれているのでその意味を問うと、実際の戦闘機の先端にも同じように書かれているとのこと。先端はアンテナなど高度の精密機器が収められているので、それに影響を与えないようこう書かれているらしい。
 最先端の武器でありながら、ふにゃふにゃした布製であるという一種のアイロニーが、これらを美術作品として成立させている。興味深い展示だと思う。
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青秀祐展「弾頭の雨が降る夜に、少年は空飛ぶ夢を見る。」
2018年6月9日(土)―6月30日(土)
12:00−19:00(日月祝休廊)
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eitoeiko
東京都新宿区矢来町32-2
電話03-6873-3830
http://www.eitoeiko.com