山本弘の作品解説(59)「河童(仮題)」


 山本弘「河童(仮題)」、油彩、F10号(53.0cm×45.3cm)
 制作年不詳。キャンバスの裏に未亡人の字で「河童 1977年」と書かれている。確かに河童に違いない。画風からも漢字の「弘」のサインからもこの年代で間違いないだろう。山本弘47歳の晩年の作品。痩せて膝をついた格好の河童。山本はたくさんの河童を描いてきた。色紙に描いたのも河童が多かった。生涯を過ごした飯田市で色紙の河童から「河童の弘さん」と呼ばれていたという。その色紙の河童は洒脱なものだった。対して油彩では一種の自画像のような河童になっている。
 端的に色彩が美しい。色彩の美しさは山本の大きな特徴だ。本当のカラリストだろう。それは本人も自覚していて、俺は色が巧いんだとうそぶいていた。自分の才能をよく知っていて、私や奥さんの前で俺は天才だと威張っていた。奥さんと二人でまた始まったと笑っていたが、亡くなって10年以上経ってからそれが本当だったと知ったのだった。すみません、不詳の弟子でした。
 今年9月の渋谷の画廊での個展に並べる予定。