ウィングフィールド『フロスト始末(上・下)』を読む

 ウィングフィールド『フロスト始末(上・下)』(創元推理文庫)を読む。最初の『クリスマスのフロスト』以来6冊目。毎回このミスや週刊文春でミステリー1位に輝いてきたフロストシリーズもこれで終わりとなる。作者のウィングフィールドが2007年に亡くなってしまったのだ。毎回とても楽しんできたので非常に残念だ。もちろん今回も傑作以外の何者でもない。
 フロスト警部の謎解きと、同時にフロストのハチャメチャで下品な性格と相まって警察署長のマレット警視との攻防がなんとも面白い。フロストは事務仕事が大の苦手、またガソリン代などの経費の領収書の改ざんがしょっちゅうなのだ。
 次々に起きる事件、上下合わせて900ページもの間だれるところが全くない。ウィングフィールドの優れた筆力だ。今回はマレット署長に加えて転勤してきた上司スキナー主任警部から徹底的にいびられて、ついに住み慣れたダントン署を去らざるを得なくなる。最後まで気が抜けない。
 イギリスではウィングフィールド亡き後、別人がフロストシリーズを書き継いでいるらしいが、ちょっと触手が動かない。フロストのとぼけた味が他の作家に再現できるのだろうか。