ギャラリーMoMo両国の篠原愛展「サンクチュアリ」を見る

 東京墨田区両国のギャラリーMoMo両国で篠原愛展「サンクチュアリ」が開かれている(4月8日まで)。篠原は1984年鹿児島県生まれ、2007年に多摩美術大学絵画学科油画専攻を卒業している。卒業した年銀座のギャラリーQでの個展で注目された。ついで2011年にギャラリーMoMo六本木で個展が、2014年には同じこのギャラリーで個展が開かれて、今回は4年ぶりの個展なのだ。
 ギャラリーが配布しているちらしから、

 今展では長年モチーフにしてき来た半人半魚を中心に画面を構成し、作家が常に大きなテーマとしている「性」に、アニミズムや仏教的自然観の要素を加えた作品を展示します。人魚は視覚的に美しく、見る者に幸福感を与える一方で、人間の男性を誘惑して海に引きずり込み、その肉を食する獰猛な一面も併せ持つとも言われています。篠原は、そこに現代を生きる女性が持ち二面性を見出し、「性とは何か、女とは、男とは何か」という疑問を投げかけています。初期の作品は、人間や動物の腹部などが切り裂かれたイメージなど死を連想させるモチーフを描くことで生を強固に表現してきましたが、近年では「性」を題材にし、動植物の旺盛な生命力、命をはぐくむ自然の計り知れないエネルギーを描き出してきました。作家はグロテスクに湾曲する人魚の形そのものや、鱗の描写などが、造形的に自身の作品表現にしっくりくると言い、初期の作品に見られる要素を垣間見ることができます。また、仏教美術の影響を受けた植物や装飾品は、象徴的に描かれ強いメッセージを含み、「性」を肯定的に表現した春画や、生命力に溢れながらどこか幻想的に動植物を描いた伊藤若冲の作品を参照することで、アニミズムや仏教的自然観、性というテーマを融合させています。
 今展のタイトル「サンクチュアリ」には、聖域や避難場所、或は安らぎの場所という意味があり、鑑賞者が作品を見ることで一瞬でも嫌なことを忘れ、そこに安らぎの場が生まれることを意図しています。同時に「絵を描く」行為そのものもまた同様で、作家自身にとって現実世界から逃避するための唯一の手段であり、安らげる居場所ともなっています。





(上の作品の一部)


(上の作品の一部)


 金魚と若い女性の組み合わせの絵画は、篠原が2007年に始めて以来、多くの女性作家たちが追随している感があるが、篠原の世界の深さ、描写の完成度にはとうてい及ばない。今展の作品も若い娘が蛇とも見紛う魚に変化していっているような図柄が描かれ、イメージの特異さは亡くなった石田哲也にも通じるが、石田が現実世界につながる通俗性を持っていたのに対して、篠原は深層心理にまで届いている。何よりも篠原の描写力はダントツに優れている。
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篠原愛展「サンクチュアリ
2017年3月11日(土)−4月8日(土)
11:00−19:00(日曜・月曜・祝日休み)
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ギャラリーMoMo Ryogoku
東京都墨田区亀沢1-7-15
電話03-3621-6813
http://www.gallery-momo.com/
JR総武線両国駅東口から徒歩5分、都営大江戸線両国駅A3出口から徒歩1分