瀬木慎一『戦後空白期の美術』を読む

 瀬木慎一『戦後空白期の美術』(思潮社)を読む。戦争後期から1963年の最後の第15回読売アンデパンダン展までのほぼ20年間の日本の美術界を扱っている。
 全25章からなっていることから分かるように、戦後20年間に限ってたくさんのテーマを語っている。第5章が日本アンデパンダン展で、これは読売アンデパンダンのことだ。参加者がすごかった。児嶋善三郎、宮本三郎、林武、向井潤吉、梅原龍三郎安井曽太郎、杉山寧、古茂田守介、岡鹿之助猪熊弦一郎、岡田謙三、朝倉文夫安田靫彦北川民次、早川重章、岡本太郎古沢岩美、田淵安一、牛島憲之、村井正誠、奥田元宋北代省三、杉全直等々、錚々たる画家たちが参加したのだ。
 1951年にはマチス展、ピカソ展が、翌年にはブラック展が、その翌年にはルオー展が開かれた。
 「夜の会」や「世紀」、「世代」などの結成にも触れ、関西の具体、また前衛書の動きも追っている。前衛書は長谷川三郎、森田子龍、日田井南谷たちが活躍し、またミショー、アレシンスキー、スーラージュマチュー、ヴォルスらとの交流もあった。
 画廊の動きについても書かれている。主な名前を拾うと、江戸橋画廊、兜屋画廊、日動画廊、サヱグサ画廊、阿部養清堂、村松ギャラリー、東京画廊、弥生画廊、フォルム画廊、櫟画廊、ナビス画廊、サトウ画廊、南画廊など、現在まで続いている画廊がいくつもある。
 第22章が前衛画廊を扱っている。東京画廊や南画廊だが、東京画廊には瀬木も積極的に関わった。しかし、新興画商の資力の乏しさから作家、コレクターと画商との間にトラブルが続き、瀬木の協力もここで限界に達したと書かれている。
 この後、日本画の危機と題する章で、横山操や中村正義が取り上げられ、多摩美術大学の改革に関わってやはりトラブルに巻き込まれる。最終章が「アンデパンダン展15回」と題して、読売アンデパンダン展の最後が語られる。
 大変有意義な戦後美術史だと思う。これに針生一郎『戦後美術盛衰史』(東京書籍)を併せて読めば、戦後の歴史の概要は理解できるのではないか。

戦後空白期の美術

戦後空白期の美術

戦後美術盛衰史 (1979年) (東書選書〈34〉)

戦後美術盛衰史 (1979年) (東書選書〈34〉)