朝日新聞の「オピニオン&フォーラム」で「過労をなくすには」をテーマに3人が意見を寄せている(11月29日)。電通で起きた過労による自殺をめぐって対策案を提案しているが、その中でネットニュース編集者の中川淳一郎が、大手広告代理店は給料もいいし社会的地位も高くモテますと書いている。しかしむしろブラック企業と社会から認定された方がいいと言う。そうすれば「どうすれば長時間労働を減らせるか」などと、現実的な話になる、と。
そこで重要になるのが、同じ広告業界でも、下請け企業の過酷な実態にきちんと目を向けることです。大手に比べて下請けは給料が低く、労働時間はもっと長いのが普通です。でも「お客様は神様」という文化は共通だから、クライアントや元請けにかなり気をつかわなきゃいけない。(中略)
「お客様は神様」という意識と下請けの過酷さの両方を変えないと、どの業界でも長時間労働の改善にはなかなかつながらないと思います。
しかし私も一時期身を置いた広告業界は、新製品の発表日時が決まっていて、それに合わせて広告を制作するという、クライアントからの厳しい要請が現実にあり、広告制作会社どおしの苛烈な競争も現実にあるため、さらにコスト面での競争もあり、少ない人数で高いレベルの広告を作成することを求められている以上、長時間労働を改善することがなかなか難しいのだ。
ところで、この「お客様は神様です」という言葉は人口に膾炙されていて、発端は三波春夫の発言にたどり着くのだが、実は三波春夫の真意は別だったと知った。それを誰の文章で読んだのだったか、肝心のことを忘れてしまったのだが、三波春夫は、お客様は目の前の観客ではなく神様だと言ったのだという。神様がお客様であって、観客ではないという意味だった。すると、お店で客が「俺は神様だ」と威張るのが全くの勘違いだということになる。
そう考える方が自然だろう。どうして大した品物を買ったのでもない客を神様だなんて考えなければならないのか。客はもう少し謙虚になるべきだろう。