紛らわしい硬貨

 娘がネットで購入した品代を私が立て替えていた。それを大きな札で支払ってくれるというので釣りが必要になったが、手許に100円硬貨がなかった。しかたなく貯金箱から数枚の100円玉を出して娘に渡そうとした。父さん、これ違うよ、100円じゃないよ。何を言っているんだと見れば、それはたしかに100円玉ではなかった。全く違う。ゲーセンのメダルが紛れ込んでいたのかなあ。ゲーセンのメダルだったらと娘が言う、店名が刻印してあるのに、これには文字は何にも書いてないよ。じゃあ、何だい?


 普通の100円玉と並べてみると全然違う。表は桜の花が多数刻印されているはずなのに、大きさの異なるつぶされたような丸が多数付いている。裏はもっと違う。縦棒が5本あるだけだ。ところがこれら表裏ともざっと見た時意外にもよく似ているのだ。
 私の収入は給料と年金だがどちらも銀行振り込みだ。現金でもらうことはない。貯金箱に入れた硬貨はすべて買い物をした折などに釣銭としてもらったものだ。してみると、どこかで釣銭の中に紛れていたのだろう。支払ってくれた店の人も気付かなかったに違いない。受け取った私が全く気付かなかったように。比べてみれば全然違うのに、ざっと見た時には良く似ている。重さを測ったら100円玉が5グラムなのに贋物は4グラムしかない。直径も100円玉の方がわずかに小さい。では自販機向けに作られたものではないだろう。
 たくさんの釣銭の中に紛れていたときだけ通用する代物だ。贋金として使うにはあまりにも効率が悪いだろう。一方、ゲーセンのメダルでなければ、このためにわざわざ型を作って作っていることになる。いったい誰が何のために作ったのだろう。