中島みゆきの「歌姫」

 中島みゆき「歌姫」が好きで何度も聴いている。『寒水魚』というアルバムの中の1曲だ。その歌詞の一節「握りこぶしの中に/あるように見せた夢を/もう2年もう10年/忘れ捨てるまで/スカートの裾を/歌姫 潮風になげて/歌姫 夢も悲しみも欲望も/歌い流してくれ」・・・。この「 もう2年もう10年」というところが実に泣かせる。「もう10年」というところが身に染みる。
 カミさんから、あんた昔から女にはモテないのに男にはモテたわねと言われた。でも10人も親友がいたらそれは親友ではないわよ、とも。いや10人はいなかった、7人だった。しかし7人のうちもう4人が亡くなってしまった。40年前、星が行方不明になった。恐山へ行くけどその前に会いたいというのを断ってしまい、それきりになった。30年前、活司がガンで亡くなった。会社へ電話してきて、おれは肝臓ガンであと3カ月の命だから会いに来いと言われたのに行かなかった。10年前の夜、原和が突然電話してきて、俺はこれから死ぬからと言ってその夜本当に死んでしまった。昨年は小学校1年からの付き合いだったハムが肺ガンで亡くなった。だからもう自分もいつ死んでも不思議はないだろう。
 ほとんどやりたいことはやった人生だった。そういう意味ではいつ人生が終っても不満はないつもりでいる。ではやり残したことはないかと言われればないわけではない。その時、中島みゆき「歌姫」の歌詞が身に染みる。深夜ときどき聴いている。(さすがに昼間は聴かないが・・・)。


寒水魚

寒水魚