江本創展「−−妖(あやし)の森に棲む−−」を見る


 東京銀座の青木画廊で江本創展「−−妖(あやし)の森に棲む−−」が開かれている(2月5日まで)。江本は1970年、兵庫県生まれ。1995年に筑波大学大学院修士課程芸術研究課を修了している。1999年まで版画(主に銅版画、リトグラフ)を制作。その後、現在の標本的オブジェの制作を始める。そのオブジェの最初の個展が、2000年にギャラリー銀座一丁目で開かれ、その後ギャラリー砂翁などで発表し、最近は青木画廊で個展を続けている。




 江本の標本的オブジェはリアルな剥製に見える。ところがその動物は架空の生物なのだ。タツノオトシゴの頭に鳥の羽根が付いていたり、亀なのに頭が牛そっくりになっている。この偽亀は実は『不思議の国のアリス』に登場する偽海亀を模している。偽海亀とはイギリスで海亀のスープと称して牛のスープを供しているレストランを諷してルイス・キャロルが創作した動物なのだ。江本の作る幻想的な動物標本のオブジェもこれに似ている。魚に腕があったり、あるいは魚に派手な羽根が生えていたり、一見鳥のようでありながら翼が昆虫の総翅目の羽根のようなものもある。またトカゲのようでありながら脚が10本あったりする。それらを江本はまるで本物の剥製のように作っている。本物のようにというのは、そんな生物は地球上に存在しないからだ。と、念を押したくなるほどの出来栄えだ。
 青木画廊は海外に展開していないようで、江本の作品が海外で発表されたのはセカンダリーマーケットでしかないらしい。これだけの作品だ。海外のコレクターにもぜひ紹介してもらいたい。
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江本創展「−−妖(あやし)の森に棲む−−」
2016念1月23日(土)−2月5日(金)
11:00〜19:00(日曜12:00〜19:00、最終日〜17:00)
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青木画廊
東京都中央区銀座3-5-16 島田ビル2F
電話03-3535-6858
http://www.aokigallery.jp