辻惟雄『若冲』(講談社学術文庫)を読む。カラー図版が豊富に使われているので、やや厚い用紙を用いているため350ページだが25mmの厚さを持っている。本書・学術文庫版のあとがきによると、原本は1974年に美術出版社から発売された。若冲の《動植綵絵》全幅を原色版で最初に載せた大型本だったが、出版は時期尚早で発行部数もわずかだったという。
私が若冲を初めて知ったのは、同じ辻惟雄『奇想の系譜』の1988年刊のぺりかん社版だった。面白い画家だとは思ったが、たしか白黒図版だったので、本当に魅せられたのは2006年に宮内庁三の丸尚蔵館で《動植綵絵》全幅を見てからだった。その素晴らしさに圧倒された。
辻は40年も前にこの本を作っていたのだ! 恐れ入ってしまう。巻頭口絵に《動植綵絵》全30幅を載せ、ついで伝記と画歴、若冲画小論、印譜解説、若冲派について、最後に詳しい図版解説が付けられている。図版の数は78を数え、その多くがカラーで紹介されている。見事という他ない。
ただ、文庫版ということで、なにぶん図版が小さい。若冲は細部まで描き込んであるので、その点に不満が残る。本書を読みながら大型本の若冲画集を見たいと思う。しかし、これで本体価格1,500円は安いのではないだろうか。
それにしても若冲は《動植綵絵》に尽きるのではないか。これが海外に流出しなくて国内に残ったのは幸せなことだったと思う。東京国立博物館に若冲《動植綵絵》室を作って常設してくれたら良いのに。日本の美術館もルーブルのように常設を充実してくれないだろうか。
WIKIPEDIA「動植綵絵」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8B%95%E6%A4%8D%E7%B6%B5%E7%B5%B5

- 作者: 辻惟雄
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/10/10
- メディア: 文庫
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