ギャラリー21yo-jの前田哲明展がすばらしい

 東京自由が丘のギャラリー21yo-jで前田哲明展が開かれている(11月16日まで)。前田は1961年東京都生まれ、1986年に東京芸術大学彫刻科を卒業し、同年安宅賞を受賞している。1991年同大学大学院博士課程満期修了、1997年に文化庁の在外研修員として1年間ロンドンに学んだ。
 1986年東京のギャラリーパレルゴンIIで初個展、その後ギャラリイK、村松画廊、ときわ画廊、ルナミ画廊、ギャラリーGAN、秋山画廊、またイギリスの画廊などで個展を繰り返している。特にときわ画廊では1990年から1998年までほとんど毎年個展を開いてきた。



 玄関のドアを開けると、左手に画廊の空間がある。そこに前田の大きな鉄の立体がそびえ立っている。画廊は天井が高く、その空間いっぱいに鉄の円筒や柱が屹立している。床に丸い鉄板が敷かれていて、その鉄板から天井に向かって何本もの柱が立っている。また幅広い鉄板や円筒形が中心に向かって斜めに円錐形を形作るように立っている。一見、古代の竪穴式住居の形を思わせる。構造物は丸い鉄板の円周に沿ってのみ作られており、内部には空間ができている。1箇所に作られている狭い隙間から内部の空間に入ることができる。外形も内部構造も本当に古代の住居のようだ。この近似は何なのか。古代人が住居の機能を追求した結果竪穴式住居という美に至ったことと、前田が造形を追求してこの形に到達したことが、生物学でいう収斂進化という様相に至ったのかもしれない。
 画廊はとくに広いわけではないが、天井はきわめて高く、その画廊の空間と前田の立体作品がみごとに調和して設置されている。この空間も含めて優れた達成を示していると言えるだろう。その他小さな立体作品やドローイングが展示されている。

 すばらしい個展を見ることができた。画廊は自由が丘駅から徒歩10分の場所に位置しているが、ぜひ多くの人に足を運んでもらいたい。それだけの価値がある展示だと思う。
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前田哲明展
2014年10月30日(木)−11月16日(日)
13:00−18:00(月・火・水曜休廊)
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ギャラリー21yo-j
東京都世田谷区等々力6-24-11
電話03-3703-7498
http://gallery21yo-j.com
東急東横線大井町線 自由が丘駅正面口より徒歩10分
東急大井町線 久品仏駅より徒歩8分