『江戸の神社・お寺を歩く〔城西編〕』を読む

 黒田涼『江戸の神社・お寺を歩く〔城西編〕』(祥伝社新書)を読む。同じ著者の『江戸の神社・お寺を歩く〔城東編〕』の続編。品川区から港区、目黒区、渋谷区、新宿区、文京区、豊島区、板橋区など東京の山の手地区を13の地域に分け、そこの630余りの寺社を訪れている。JRや地下鉄の駅から出発してお寺や神社を訪ねて歩き、そのコースを一筆書きのようにたどって詳しく紹介している。それぞれの場所を訪うための道順などは実にていねいに記述している。コンビニの横の路地を入っていくとか、道路を反対側に渡って次の角を右に入るとか、それを掲載したすべての寺社について書いている。地図も付され、まず迷うことはないだろうと思われる。寺社名のあとに★印がついている。これは訪れる優先順位の目安だそうで、[★★★]は「ぜひ」、[★★]は「おすすめ」、[★]はそれ以外とのこと。ちなみに★3つは75の寺社に付されていた。
 私が若いころ勤めていた事務所があった港区愛宕あたりを見ると、まず新橋駅から出発し、烏森神社、日比谷神社を回り、地下鉄でひと駅虎の門まで乗り、虎ノ門金刀比羅宮を訪ね、愛宕神社へ行く。ここには急峻な石段がある。3代将軍家光がこの石段を馬で登って山上の梅の枝を採ってこいと無理を言ったとき、曲垣平九郎が馬で石段を上り下りしたという有名な逸話がある。驚いたことにその後も何人も成功しており、明治以降も達成した記録があるという。
 そこから日比谷線神谷町駅の方へ行き、西久保八幡の石段を登る。そして芝公園の方へ歩き、芝東照宮、ついでこの愛宕・芝コースの目玉である増上寺へ行く。目玉だけあってやや詳しく紹介されている。さらに大門駅近くの芝大神宮、そこから常照院、安蓮社を経て小さな木造の松蓮社に着く。ここは手掘りの洞窟があって、懐中電灯を手に奥まで行くと弁天様が鎮座している。すぐ近くの都営地下鉄三田線御成門駅がゴールになる。
 暇な時間があったら、本書を手に紹介されているコースを回ってみたい。