アートギャラリー環の野津晋也展を見る


 東京神田のアートギャラリー環で野津晋也展「解体シン書」が開かれている(11月8日まで)。野津は1969年島根県松江市生まれ、1992年に鳥取大学農学部を卒業した。さらに2000年に東京芸術大学美術学部油画専攻を卒業し、2002年に同じく東京芸術大学大学院油画専攻を終了している。今までにアートギャラリー環や表参道のMUSEE Fなどで個展を行っている。
 野津は最近あまり見かけなくなったシュールレアリスム系の画家だ。とくに石田徹也が亡くなったあと、優れたシュールレアリストとして貴重な存在だ。
 アートギャラリー環は1階と2階に展示室がある。1階の壁面に大きな作品が展示されている。縦80センチ、横2メートル40センチ、3枚の紙を並べている。これらは貼り合わせていない。どうして? と訊くと、3枚を別々に1枚ずつでも独立して展示できるように考えたという。



 家やテーブルから足が出ていて、鼻なんかがあったりもする。テーブルと書いたが、そのテーブルの下には何やら不気味なものが詰まっている。テーブルの上には盆栽があり、その枝からは人の下半身だけが吊り下がっている。左下には靉光が描いたような眼が見開かれている。
 別の作品では建物の中庭らしきところがゴミみたいなもので埋まっている。蓮の実が落ちた後の、あれは何て言うのか枯れウテナみたいなものも埋まっている。空き箱からやはり足が出ている。遠く後ろの方に空き缶が聳えて背後に怪しい虹も浮かんでいる。
 作家のテキストから、

 獣のような、人のような「それ」が住んでいる。
 体の真ん中にある天板から下には足がにょっきりとのびている。ないのもある。その足は膝の下までのびた体毛に覆われ、手入れをされた様子はない。一方、天板から上に胴体はない。すぐに頭部らしきものになる。目はいつのまにか退化したせいで、はっきりとは確認できない。それなのに、どうしたわけか鼻だけは居丈高にその存在を主張している。
 一見して、「それ」は臆病でしごくおとなしい。しかし、一旦腹をすかせば奇声を発し、なにをしでかすのか油断ならない。とにかく、今すぐにでも捕まえて、追っ払うことがまず肝要である。だが、そもそもどうやって・・・・?
 ところで、先程から私の背中に触れるものがある。ふと振り返ると、目の前には異様に肥大した「それ」の鼻先が迫っていた。見ると次第に大きくなり、いまや周囲を圧する勢いで、巨大な鼻だけが部屋の中へ鎮座していた。
 そして、困ったことに、どこからか耳鳴りのように聞こえてくる声が、「よう、兄弟!」と執拗に呼びかけてくるのであった。

 不思議な作品だ。
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野津晋也展「解体シン書」
2014年10月27日(月)〜11月8日(土)
11:00〜18:30(最終日は17:00まで)
日曜・祝日休廊
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アートギャラリー環
東京都中央区日本橋室町4-3-7
電話03-3241-3920
http://www.art-kan.co.jp/
※JR神田駅東口を出て中央通りを右折し(三越方向へ向かい)、カメラのキタムラの横を右折、すぐに老舗の蕎麦屋「砂場」があり、その手前を左折するとすぐ。(徒歩3−4分)
またはJR新日本橋駅または地下鉄三越前駅下車、連絡通路にて2番出口より徒歩3−4分。