ゴイサギの釣り



 机の引き出しから古い写真が出てきた。裏面の書き込みから18年前の1996年6月と7月に上野の不忍池で撮影したことが分かる。1枚目の写真ではゴイサギの若鳥が池の中の柵みたいな所に止まっていて、数m離れた池の縁で大勢の観客がそれを見ている。この不忍池には親鳥もいるが、親鳥は人にこんなには近づかない。観客はゴイサギの釣りを見ているのだ。
 2枚目の写真は7月に撮影したもので、同じ若鳥が池の縁からすぐ近くのところにいる。2mくらいの距離だったか。池の中の杭に止まっていて小魚を釣っていた。釣り方は、池の表面をゆっくりと流れてくる小枝をクチバシで拾い上げ、少し離れたところに落とす。このとき流れのいわば上流の方へ落としている。小枝はゴイサギの横を通ってゆっくりと流れる。池の中の小魚が餌と勘違いするらしく水面に上がってきて小枝をつつく。それを狙って首を伸ばし、すかさず銜えていた。すぐに飲み込み、次の獲物を狙っている。小枝のほかに煙草のフィルターも利用していた。30分ほど見ているうちに何回も成功していた。
 明らかにゴイサギが道具を使って釣りというか、魚を捕っていた。当時、熊本では別の野鳥が同じように釣りをしているという報告はあったが、ゴイサギではまだ報告されていないと見物している人が言っていた。不忍池ではこのゴイサギの釣りはしょっちゅう見られたようだし、大勢が見物していたので誰かが報告しているだろう。
 撮影したカメラは、コンパクトカメラのコニカビッグミニだった。単焦点の広角レンズが付いていて、望遠撮影はできない。2枚目の写真は少しトリミングしている。