エイズの感染力についての誤解

 永井するみ『枯れ蔵』(新潮社)は間違いの多いミステリだった。ほとんどでたらめと言ってもいいほどだった。その中のエイズに関する記述が感染力が強いという誤解を与えるものだった。
 冒頭エイズ患者の黒人にレイプされるシーンがなぜかあるが、これを死刑宣告のように描いている。エイズは極めて感染力に劣るのだ。簡単には感染しないのではないか。以前イタリアでエイズに感染した女性が、腹いせに多くの男に感染させてやろうと、乱交パーティーに参加したり、街で男を誘ったりしたが、いっさい避妊しなかったことで逮捕された。警察の呼びかけに応じてエイズ検査を受けた男達のわずか数人しかエイズには感染していなかったというニュースを読んだことがある。
 エイズの感染力に関して、坂爪真吾『男子の貞操』(ちくま新書)にもはっきり書かれている。

 性風俗のリスクというと、「HIVエイズウイルス)」というイメージが、真っ先に頭に浮かぶ人も多いかもしれません。HIVは、メディアや性教育の場で頻繁に取り上げられるため、コンドームを着けずにセックスをしてしまうと、一発でHIVに感染してしまうと信じている男子も少なくないと思います。
 たった一度だけ、行きずりの相手とコンドームを着けずにセックスしてしまったことを気に病んで、その後、何年にもわたって、HIVに感染していたらどうしようという「エイズ恐怖」に苦しめられてしまう人もいます。
 しかし、HIVの恐ろしさを過剰に訴えることで、若者への性教育の手段にしたいと考えている性教育・行政関係者にとっては不都合かもしれませんが、HIV自体は、極めて感染しにくいウイルスです。仮に、HIVに感染している相手と、コンドームを着けずにセックスをしたとしても、感染する確率は0.1〜1%以下です。その相手と結婚して、毎週2回セックスをするとしても、感染までには、数年〜10年近くかかる計算になります。

 新婚で週に2回は少ない気がする。ただ下記に紹介したが、ロシア人みたいに毎週16回もするのでは、1年で感染してしまうことになる。行きずりだったら、まず心配ないのではないか。


絶倫のロシア人、淡泊な日本人(2007年8月10日)


枯れ蔵 (創元推理文庫)

枯れ蔵 (創元推理文庫)