東京都写真美術館で『岡村昭彦の写真』展が開かれている(9月23日まで)。その展覧会のちらしより、
岡村昭彦(1929-85)は、1964年6月12日号の『ライフ』に9ページにわたり掲載されたベトナム戦争の写真によってフォトジャーナリストとしてデビューを果たし、「キャパを継ぐ男」として一躍国際的に注目されました。65年には、南ベトナム解放民族戦線の取材に成功しますが、南ベトナム政府から 5年間の入国禁止処分を受けてしまいます。ベトナムから切り離された失意の岡村は、ドミニカ、ハワイ、タヒチ、ニュージーランドなど環太平洋地域を取材し、68年に家族とともにアイルランドに移り住みます。北アイルランド紛争を取材するだけでなく、ベトナムの戦場に特殊部隊を送り込み核時代の実験戦争としたアイリッシュのJ.F.ケネディ大統領のルーツを追ってのことでした。さらにそこを拠点に69年、日本人ジャーナリストとして最初にビアフラ戦争を取材。また入国禁止処分が解けた71年には、徹底した取材制限が行われた南ベトナム政府軍によるラオス侵攻作戦の失敗の実態を取材することに成功します。晩年はバイオエシックス(生命倫理)という言葉を掲げてホスピスの問題に取り組みました。(後略)
岡村昭彦といえば、ベトナム戦争の頃、岩波新書で発行された『南ヴェトナム戦争従軍記』『続・南ヴェトナム戦争従軍記』を思い出す。あの本でベトナム戦争について知った気がする。ベトナムを最初に報じたフォトジャーナリストという印象が強い。
しかし今回大きな回顧展を見てみて、ベトコンの取材に成功した結果、南ベトナムへ5年間入国禁止処分を受けてアイルランドやビアフラの取材に転じたとあって、終始ベトナムの取材に関わっていたのではなかったことを知った。
岩波新書の読後は、岡村のことをベトナムを取材したある種の英雄のように感じていたが、その後読んだ本多勝一の本では、岡村はクソミソに貶されていた。何か人間性に問題があるように思える書き方だった。本多勝一は偏見の強い人間だから、その意見を鵜呑みにすることは危険かもしれない。ただ5月に銀座ニコンサロンで見た石川文洋が同じくベトナムを取材していて、石川は岡村と異なり現地の住民との親しげな交流があったことが感じられたことからも、岡村の人間性を問題視した本多勝一の指摘もまんざら的を外してはいないのかもしれないと思われる。
しかしベトナム戦争等の現場でしっかりと戦闘を取材しているのは事実で、拷問を受けているベトコンの姿や撃たれた瞬間の兵士、恐怖にひきつった兵士の顔、捕らえられて銃殺されるベトコンの家族の写真など、決定的瞬間の写真が多い。戦争を伝えた優れたフォトジャーナリストという評価は変わらないだろう。
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岡本昭彦の写真−−生きること死ぬことのすべて
2014年7月19日(土)〜9月23日(火・祝)
10:00〜18:00(木・金は21:00まで)
月曜日休館(月曜が祝日の場合は開館し、翌火曜日休館)
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東京都写真美術館
電話03-3280-0099
http://syabi.com/
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