ギャラリートモスの野澤義宣展「−己事記−」を見る


 東京日本橋本町(三越前)のギャラリートモスで野澤義宣展「−己事記−」が開かれている(6月19日まで)。野澤は1947年生まれ。数年前から具象的な作品を描いているが、それ以前の10年間ほどは真っ黒な画面を作っていた。


 正面の壁のアクリル作品は「己事記」と題されている。「こじき」と読むようだ。自分の歴史ということか。線で描かれた小さな形が密集している。仏像のような、額に入った何も描かれていない絵のような、うごめく虫のような、蛇のような形が見える。




 右手にはクレパス作品で描かれた人物像が並べられている。「寒山一人」「うちわ」「自画像」などと題されている。「月をいただく」という放哉の句のようなものもある。

 左手にはクレパスの「出現」というシリーズが並んでいる。野澤が以前谷中の墓地に面していたアパートに住んでいたとき見た光景とのこと。怖さは少しもなかったと。

 今回も子どもたちの顔が描かれている。これもとてもいい。
 野澤はアクリルで描いた抽象的でもある作品、寒山などを描いた人物シリーズ、超常現象を描いた作品など、同時にいくつもの作風を描き分けている。野澤にとってはアクリルの作品が本命なのかもしれないが、どれも良いのだ。とくに寒山などは大変魅力的だ。画家の穏やかで静かな一面と複雑な内面が表れているようだ。
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野澤義宣展「−己事記−」
2014年6月10日(火)−6月19日(木)
11:00−18:00(最終日17:00まで)日曜休廊
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ギャラリートモス
東京都中央区日本橋本町1-3-1渡辺ビルB1F
電話03-3271-6693
http://www.jpin.co.jp/saoh
地下鉄(銀座線・半蔵門線三越前駅A1番出口より徒歩3分
(1階にギャラリー砂翁のあるビルの地下1階)