座・高円寺レパートリー『リア』を見る

 座・高円寺レパートリー『リア』を見た(6月6日)。シェイクスピア作『リア王』を脱構築したような『リア』。構成・演出が佐藤信、リアを女優の渡辺美佐子が演じ、植本潤と田中荘太郎の2人の男優がリアの3人の娘と道化などを演じる。
 パンフレットに佐藤が書いている。シェイクスピアの原作にある言葉以外は使わない……というルールを自分に課したと。リア王を女優が演じる、役者が3人だけ、原作の複雑なストーリーをほとんど刈り込んでしまったなど、大きく改変している。グロスターと2人の息子の物語も省いている。原作の決闘など派手なシーンは描かれない。1人の男優植本がほとんど台詞だけで3人の娘を演じ分ける。
 何が起こっているのか。思うにシェイクスピアの原作を能に引き寄せて再構成したのではないだろうか。日本の舞台に載せるのに能の形式に近づけることほど相応しいものはないのかもしれない。原作の大筋を変えないで改変するために、まずリア王を女優に演じさせ、3人の娘を男優に演じ分けさせ、演技を抑えて象徴的な舞台に変えている。だから『リア王』ではなく『リア』なのだ。
 渡辺美佐子井上ひさしの一人芝居『化粧』を28年に渡って演じたという。それをついに見なかったという悔いが少し残っている。『リア』は昨年に続いて2回目の公演。昨年は風邪をひいてしまって見逃し、ようやく見ることができた。来年も再演するようなのでもう一度見てみたい。