調布画廊で柴田和展を見る


 東京調布市の調布画廊で柴田和展が開かれている(9月21日まで)。柴田は1934年生まれ、武蔵野美術大学の前身帝国美術学校を卒業している。柴田は以前このブログでも取り上げた堀内康司の仲間で、戦後堀内と一緒に活動していた。柴田には詳しく聞かなかったが、堀内は「実在者」のグループを作っていた。その主なメンバーは、靉嘔、池田満寿夫真鍋博らだった。
 堀内康司の作品は、1996年に東邦画廊の「三者三態展」で見たことがあるが、今回の柴田の作品が堀内の作品と通底するところがあっておもしろかった。りんごを3個描き、その画面を細い帯状に切って左右をずらしている。DMに書かれた作家の言葉。

人類起源から始まったであろう/"縛る、切る"などを/ひとつの記号としてとりあげ、/ユーモア、ナンセンス、ウィット、ペーソス/仕立てにしました。

 画廊主が雑誌『月刊武蔵野 クロス・トーク』9月号に、柴田を紹介して次のように書いている。

 1960年代から活躍した柴田和は、一時筆を中断いたしましたが、再び変わらぬ姿勢で絵に取り組み、その一つの追求を私たちに届けてくれます。どうぞ、ご高覧を!!


 以前柴田と会ったとき、私にあんた長野県の飯田だったな、飯田に松川が流れているだろう。あそこでヤマメの40cmある奴を釣ったことがある、と話してくれた。その場所も具体的に教えてくれた。松川は天竜川の支流で飯田市内を流れている。そんな大きなヤマメがいるなんて想像もつかなかった。いや、地元の連中は知らないんだよ。俺は日本全国ヤマメを釣って歩いていたんだ。20年くらい絵を描かないで釣りばかりしていた。俺は8歳のときからフライを使って釣りをしてきたんだ。釣りに関する本も20冊くらい書いているよ。50cmのヤマメを釣り上げるのを目標にして全国を回ってきたんだけれど、45cmが最高で、そのうち一緒に行った弟子の高校生に50cmのヤマメを釣り上げられてしまって、それでもう釣りはやめたんだ。
 柴田の釣りは渓流でフライ(疑似餌)を使うもの(フライ・フィッシング)だという。釣ったヤマメは網ですくい上げるが、大きさを測ったら決して手を触れないで放してやるという。キャッチ・アンド・リリースだよ、食べないんだ。
 柴田は開高健に渓流のフライ・フィッシングを教えたという。共通の知人のカメラマンから紹介されて、手ほどきしたとのこと。開高の腕はどうでしたかと訊くと、あいつは下手だったね、不器用なんだよ、もっとも、だから釣りのことを面白く書けたんじゃないか。
 この柴田和展を行っている調布画廊は、生前の針生一郎さんが企画をしている画廊だった。京王線調布駅東口を出て、北に向かって4分ほど進むと甲州街道に突き当たるが、その手前の路地を入ったところにある。小さな画廊だが歴史は古い。


堀内康司という画家がいた(2012年4月8日)
       ・
柴田和展
2013年9月4日(水)〜9月21日(土)
11:00〜17:00(土曜日〜16:00)
日曜・祝日休廊
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調布画廊
東京都調布市布田1-9-3 プレイス調布102
電話042-481-6651


渓流フライフィッシング

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