コバヤシ画廊の太田三郎展「戦ノ碑 POST WAR 68」を見て



 東京銀座のコバヤシ画廊で太田三郎展「戦ノ碑 POST WAR 68」が開かれている(8月24日まで)。太田は1950年山形県生まれ。1971年に鶴岡工業高等専門学校機械工学科を卒業している。1980年よりコバヤシ画廊をはじめ個展を多数開いている。
 今回は「戦ノ碑 POST WAR 68」と題して、戦争の記憶を伝える日本各地の石碑や銅像を切手シートの作品にしている。小さな作品だが、きわめて優れた仕事だと言える。本展のためのプレスリリースから一部引用する。

戦争の記憶を伝えるものに、軍事施設としての建物や地下壕などの戦争遺跡と石碑や銅像がある。戦争遺跡と異なり石碑や銅像は、戦争に関わる何らかの記憶を意識的に伝えようとして建立されたものである。太平洋戦争終結後、我が国には何を伝えようとしてどのような「碑(いしぶみ)」が建立されたのだろう。2012年11月から2013年6月にかけて私は、日本各地に残る戦争関連の「碑」を巡る旅に出た。目的地として、原爆を投下され特に被害が甚大だった広島と長崎、日米最後の決戦で24万人以上が戦死した沖縄、特攻基地があった鹿児島の知覧、そして一夜の空襲で10万人が亡くなった首都・東京を選んだ。また旅の手引きとして、歴史教育者協議会編「石碑と銅像で読む近代日本の戦争」を参考にさせていただいた。

 その作品リスト(作品名と所在地)

1. 原爆の子の像 広島県広島市中区中島町平和記念公園
2. 韓国人原爆犠牲者慰霊碑 広島県広島市中区中島町平和記念公園
3. 峠三吉詩碑 広島県広島市中区中島町平和記念公園
4. 毒ガス障害死没者慰霊碑 広島県竹原市忠海大久野島
5. 原子爆弾落下中心の碑 長崎県長崎市松山町5 平和公園
6. 乙女の像と長崎刑務所浦上刑務支所跡 長崎県長崎市松山町5 平和公園
7. 松尾あつゆき句碑 長崎県長崎市松山町5 平和公園
8. 平和の礎 沖縄県糸満市摩文仁614
9. 沖縄師範健児之塔 沖縄県糸満市摩文仁ハンタ上原548
10. 韓国人慰霊塔 沖縄県糸満市摩文仁448-1
11. 魂魄之塔 沖縄県糸満市米須嵩下1441-3
12. ひめゆりの塔 沖縄県糸満市米須伊原105-1
13. 小桜の塔 沖縄県那覇市若狭1-26-5
14. 特攻隊慰霊碑 鹿児島県南九州市知覧町郡17881 知覧特攻平和会館敷地内
15. 出陣学徒壮行の地の碑 東京都新宿区霞ヶ丘町10-2 国立競技場
16. 戦没プロ野球選手鎮魂の碑 東京都文京区後楽1-3-61
17. 移動劇団さくら隊原爆殉難碑 東京都目黒区下目黒3-20-11 五百羅漢寺
18. 満蒙開拓団殉難者の碑 東京都多摩市蓮光寺3-19
19. 千鳥ヶ淵戦没者墓苑  東京都千代田区三番町2
20. 慰霊碑哀しみの東京大空襲 東京都台東区上野公園内

 太田はこれまでも、戦争の記憶を伝える切手シートの形の作品を数多く作ってきた。その一部が、「兵士の肖像」「被爆地蔵」「被爆樹」「無言館」「被爆者」「軍人像」「戦災痕」等々だ。この仕事を持続的に根気よく続けている。決して昨日今日の思いつきではない。作品は小さく派手さはないが、その意味するものは深く重い。
 ここに掲載した作品は、広島市平和記念公園の「原爆の子の像」。切手シートの作品とその一部を拡大したもの。
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太田三郎展「戦ノ碑 POST WAR 68」
2013年8月15日(木)−8月24日(土)
11:00−19:00(最終日17:00まで)日曜休廊
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コバヤシ画廊
東京都中央区銀座3-8-12 ヤマトビルB1
電話03-3561-0515
http://www.gallerykobayashi.jp/