東京銀座のフォルム画廊で森本秀樹展が開かれている(6月1日まで)。森本は1951年、愛媛県宇和島出身。ギャラリー汲美をはじめ、ギャラリーゴトウ、小田急デパートのギャラリーなど数多くの個展を行っている。
フォルム画廊は往年の大コレクター福島繁太郎が創設した由緒ある画廊だ。今でも膨大なコレクションを有し、毎年収蔵品のなかから松田正平展、香月泰男展、喜多村知展などを開いている。
このフォルム画廊で個展を開くに当たって、森本秀樹もいつもとは多少違う作品を展示している。全体に完成度が高いという印象がある。どの作品にも上質な叙情がうかがわれる。いつもはもう少し冒険的な作品が見られたし、とんがった作品も並んでいたりした。伝統的な画廊で個展を開くに当たって、手堅いところでまとめたのだろう。すると高い水準の上質な叙情が描き出されることになる。
森本の画業を日本の美術史に当てはめれば、山口薫、坂本善三、鳥海青児など、抒情の系譜に連なると言えるだろう。
写真はDM葉書だが、この作品は20号の油彩で、「野辺の送り」と題されている。作品のテーマと裏腹に暗さ・陰気さがこれっぽっちもない、どこか明るい穏やかな画面だ。周囲の塗り残しが効果的だし、葬列の中央の人物が持つ位牌や遺骨も塗らないで地色を出している。頭上の旗は白い絵具が塗られているが。
絵には画家の性格が表れるとすれば、森本は穏やかで上品な人柄なのだろう。実際に知っている森本はとても上品な人だった。
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森本秀樹展
2013年5月24日(金)−6月1日(土)
11:00−18:30(日・祭 休廊)
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フォルム画廊
東京都中央区銀座5-7-10 ニューメルサ7F
電話03-3571-5061
地下鉄銀座線銀座駅A2番出口より徒歩1分