永井画廊の岡野耕三回顧展を見る

 東京銀座の永井画廊で岡野耕三回顧展が開かれている(6月1日まで)。岡野は1940年岡山県味野町(現倉敷市)生まれ。1962年東京芸術大学美術学部に入学、1966年同大学油画科(小磯良平教室)卒業。卒業制作で大橋賞を受賞し、大学院に進学する。大学院2年在学中に渡欧、その後スペイン中央部の都市クエンカに定住し制作を続ける。2003年クエンカにて急逝、享年63歳。2012年岡山県立美術館で回顧展が開かれる。
 今回没後10年を期して永井画廊で回顧展が企画された。永井画廊の1階のギャラリーに足を踏み入れると大きな油彩の抽象作品2点が目に入った。ひとつはグレーの地色におおよそ円形の図形が描かれていて、鼠色、黒、白、緑色が、円や弧を描くように重ねられている。静かで緊張感を持った造形だ。
 もう1点はベージュの地色にやはり円形の図形が描かれている。こちらは朱色の塊が中央に大きく渦を巻き、その下に白、茶、緑が円を描くように重ねられている。これらを見て、即座に岡野の才能を確信した。


 3階と4階のギャラリーには水彩とペン、色鉛筆などで描かれた作品が並んでいる。いずれも静かで厳しい表情の作品だ。油彩作品と同様、周囲に大きな余白を取っている。ある種、特異な構造の絵画作品だ。亡くなった画家でやはり周囲に大きな空白をおいた油彩の静物画を描いていた関龍夫の言葉を思い出した。「ぼくは余白をもった日本画の空間を油で描いているんだよ」。





 永井画廊では、今回の好評に応えて、8月にも岡野耕三回顧展・特別展示を企画しているという。日本ではほとんど無名の岡野耕三にかける永井画廊の意気込みが伺われる。
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残響−没後10年−岡野耕三回顧展
2013年5月21日(火)〜6月1日(土)
11:30〜19:00(日曜休廊)
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永井画廊
東京都中央区銀座4-10-6
電話03-3547-9930
http://www.nagai-garou.com/