『二流小説家』を面白く読む、しかし

 デイヴィッド・ゴードン『二流小説家』(ハヤカワ文庫)を面白く読む。『ミステリが読みたい!』『このミステリーがすごい!』『週刊文春ミステリーベスト10』のいずれも海外部門で1位を獲得したという評判の高いもの。
 タイトルの由来は、主人公の作家がそれまでポルノ小説やエロティックなSFなどを偽りの名前で書いてきたということからきている。ところがある日、残忍な連続殺人を犯して死刑執行を待っている犯人から、事件の全貌を語る本の執筆を依頼される。その取材を始めると新たな連続殺人事件が持ち上がってくる。評価が高いミステリなだけにたしかに面白い。
 ただ作中に主人公である作家が書いたポルノ小説やエロティックなSFの断章が紛れこんでくる。それを読むのはつらい。オレはミステリを読んでいるはずなのに、ナンデコンナモノヲ読マナキャナラナインダ。
 著者であるゴードンも本書を書く前にポルノ業界やファッション業界でキャリアを積んでいるという。だから、そんな過去の経験が少々軽薄な影響を及ぼしてくる。探偵業を行う主人公の有力なパートナーを務めるのが女子高生という設定にもそれが現れている。画家でもペンキ絵などを描いていると筆が荒れるという。文学でも2流のジャンルに手を染めていると、やはり筆が荒れてしまうのだろう。真犯人はあっと驚く人物なのだが、説得力がきわめて弱い。
 そんなわけで高い世評を得ているミステリなのだが、そして確かにそこそこ面白いのだが、私としては世評の意見に組みすることはできなかった。だいたい『このミス〜』とか、あまり信用できないのだ。
 

二流小説家 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕

二流小説家 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕