北島敬三写真展「PLACES」がみごとだ


 東京銀座の銀座ニコンサロンで北島敬三写真展「PLACES」が開かれている(3月26日まで)。プロフィール欄によると、北島は1954年長野県生まれ。81年日本写真協会新人賞、83年第8回木村伊兵衞賞、2007年第32回伊奈信男賞、10年第26回東川賞国内作家賞、日本写真協会作家賞、12年さがみはら写真賞を受賞している。
 ニコンサロンのHPに掲載された「写真展内容」によれば、

北海道の釧路に着いた翌日の午後、作者はこれまで経験したことがない大きく長い揺れに襲われた。ただ事ではないと思い、早々と撮影を切り上げホテルに戻り、テレビのスイッチを入れた。震源地は三陸沖、マグニチュードは8.9、東北の太平洋沿岸は津波の危険性が非常に高い、刻々と情報が伝えられる。各地のテレビ画像は、どれもみな港周辺を注意深く定点観測している。まだ海は静かで、ときおり人影も見えた。しかしみるみる水かさが増し、黒い津波が堤防を乗り越えて襲ってきた。なす術も無く、船も、車も、家屋も、何もかも押し流され破壊されてゆく。宮古、釜石、気仙沼、仙台、同時中継の画像が次々と切り替わる。釧路港周辺も映し出された。私が先ほどまで撮影していたショッピングモールの駐車場でも、クルマがどんどん押し流されている。ホテルから徒歩10分の距離だ。思わず立ち上がり、窓から外を見た。普段と変わらない様子に少し安堵したが、作者の足は震えていた。
それから毎日、写真を撮る以外は、被災地や原発事故のテレビ画面に釘付けになっていた。作者は、その非現実的な映像に戦慄した。しかし同時に、尺度を超えた自然現象を見るときのような崇高さを感じたのも事実だ。そんな余裕があったとすれば、作者が見たテレビ画像には、すでに配慮がほどこされていたのかもしれない。やはり後で聞くと、集められた未編集の映像の生々しさにショックを受け、体調を崩し職場を離れたテレビ局スタッフもいたという。
大災害が起こるとすぐに被災地を撮影する者がいる。間接的な関わりを模索する者もいるだろう。無関心こそを是とする者もいるはずだ。たとえ千年に一度の大災害であろうと、いきなり自分の撮影対象か、否かを考えてしまうところに落とし穴があるのではないか。確かなのは、このまま予定通り3月末まで北海道各地の風景の撮影を続けることだと思った。そして 4月初旬、作者は決意して被災地を訪れた。

 北島の撮影した被災地の写真は、同じ様な被災地の写真と比べて際立っているように見える。必要なものを的確に切り取っている。それは見事な手腕だ。40年前「東京特急」シリーズを撮っていた頃の不器用な北島が、撮り続けることによって、こんなにも優れた写真家に変わっていた。見る価値のある写真展だ。
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北島敬三写真展「PLACES」
2013年3月13日(水)−3月26日(火)
10:30−18:30(最終日は15:00まで)会期中無休
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銀座ニコンサロン
東京都中央区銀座7-10-1
電話03-5537-1469
http://www.nikon-image.com/activity/salon/