座・高円寺の研修生修了上演『Great Peace』がすばらしい


 座・高円寺の劇場創造アカデミー3期生修了上演『Great Peace』がすばらしい! 戯曲がイギリスの劇作家エドワード・ボンド、演出が2人で、佐藤信(Part1)と生田萬(Part2)、役者はアカデミーで2年間研修してきた3期生たちだ。3時間近い芝居が引き込まれて見たせいか短く感じられたほどだった。しかもこれがたったの1,000円という安さ。
 見どころは3つあった。演出家が2人で、前半と後半を別々に演出している。これは役者に複数の演出を経験させるためだろうが、見る側にとっても、1つの戯曲が2人の演出家でどう変わるかが体験できて有意義だった。佐藤も生田も70年代のアングラ演劇出身という共通性があるが、演出はかなり違っている。佐藤の演出は強い様式性があり、リアリズムの要素が少ない。対して生田は舞台構成は象徴的だが、役者の演技にはリアルさを求めている。演出が異なっているのに違和感が少なく、芝居に集中できたのだった。
 2つめの見どころは戯曲で、この戯曲がすばらしい。演出が佐藤と生田と異なっていても、戯曲の強さが芝居の一体感を保証している。世界は核戦争の時代(佐藤演出)とそのほぼ20年後(生田演出)を描いている。虐殺される赤ん坊を守るために友人の赤ん坊を差し出す母親、核戦争後の荒野で一人で暮らし、出産のため頼ってきた妊婦を殺して食糧を奪う老婆、生き残った若者たちが作る荒野の中のコミューンとそれへの参加を拒否して孤独に死んでいく老婆。核戦争後の悲惨さを描いて目を背けたくなるほどだが、かつてスターリンウクライナで行った大飢饉ホロモドールのことを思い出せば、これは決して未来の架空のことではない。
 3番目の見どころが役者だ。研修所で2年間学んだばかりの役者の演技がすばらしい。修了公演とは思えないほどだ。たしかに老婆を演ずるにはまだまだ未熟かも知れないが、芝居に引き込まれ堪能するには十分だった。
 上演は2月15日(私が見た回)と、16日と17日のマチネ(14:00開演)の3回。17日の回はまだ間に合うのではないだろうか。ぜひ見られることをお勧めする。
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座・高円寺
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