新国立劇場第6期生修了公演『インナーヴォイス』を見る


 新国立劇場で演劇研修所第6期生の修了公演『インナーヴォイス』を見る。作:エドゥアルド・デ・フィリッポ、演出が研修所所長の栗山民也。なかなか面白く楽しめた。私はバルコニー席で2,500円だったが、平土間でも3,000円という安さだ。
 演劇研修所長の栗山民也は著書『演出家の仕事』(岩波新書)で次のように紹介している。

 新国立劇場では、2005年4月から演劇研修所としての俳優養成が開始されました。これは新人を中心に育てる3年間の養成機関で、1期15人の定員です。現行の授業料は年間18万円で、月6万円の奨学金があります。基本的に午前10時から午後6時までの全日制ですから、アルバイトは時間的にできないと同時に肉体的にかなりハードなカリキュラムが組まれています。公立としてははじめてのケースですし、今は若干、試験的なカリキュラムで実行しています。基本的に少なくとも3年間は基礎教育に徹することが、とにかく必要なのです。(中略)
 新国立劇場の演劇研修所ができる前のことですが、このスウェーデンの王立演劇学校の責任者から日本の現状について質問されたとき、
「まだ国立の研修機関がないのです」
と答えると、彼は呆然としたまま、何の皮肉でもなくこう言いました。
「では舞台にはどなたが立っていらっしゃるのですか!」

 さすが3年間の研修成果はすばらしかった。修了公演でなければ、『インナーヴォイス』を見ることはなかっただろう。有名な作品ではないし、人気俳優が出ているわけでもない。修了公演だからこそ足を運んだのだ。安価で意欲的な舞台が見られるのだから。
 昨年の第5期生の修了公演は見逃してしまったが、第4期の『美しい日々』は台本のせいか少々評価が低かった。ただ同じ4期生の試演会『マニラ瑞穂記』はとても印象的だった。優れた舞台だった。第2期生が演じた井上ひさしの朗読劇『リトル・ボーイ、ビッグ・タイフーン』は感動したのだった。
 今年第6期生が卒業する。優れた役者がもう100人近く送り出されることになる。栗山民也の名前は教育者と演出家のどちらで歴史に残るだろう。ジョークです。


新国立劇場で「美しい日々」を見る(2011年2月28日)
「マニラ瑞穂記」−−新国立劇場演劇研修所第4期生試演会を見る(2011年1月11日)
新国立劇場演劇研修所研修生の高いレベル(2008年2月29日)
井上ひさしの朗読劇「リトル・ボーイ、ビッグ・タイフーン」(2008年2月28日)
栗山民也「演出家の仕事」を読む(2007年12月20日


演出家の仕事 (岩波新書)

演出家の仕事 (岩波新書)