東京都写真美術館で「この世界とわたしのどこか」展を見る


 東京都写真美術館で「この世界とわたしのどこか」展が開かれている(1月27日まで)。副題が「日本の新進作家 vol. 11」5人の写真家が取り上げられている。菊地智子、田口和奈、笹岡啓子、大塚千野、蔵真墨だ。ちらしに主宰者の主旨が書かれている。

東京都写真美術館では、写真・映像の可能性に挑戦する創造的精神の支援をめざして、将来性のある作家を発掘し、新しい創造活動の場を提供するための様々な事業を展開しています。その中核となるのが、毎年異なるテーマを決めて開催している「日本の新進作家」展です。

朝日新聞に大西若人のその展評が載っていた(1月16日)。

 この展覧会の英文名を訳すと「私とこの世界の間のどこか」となる。私とこの世界のどこに視点を置くのか、がテーマなのだろう。1970年代生まれの女性5人の写真表現にまず感じるのは、世界との「遠さ」だ。

 大西が端的にまとめている。「笹岡啓子が撮る釣り人の姿。うんと遠くから人影をとらえ、点に近いものも。……それを遠くから見つめる作者」、「田口和奈の作品は白黒の女性のアップ。なのに遠さを感じるのは暗く焦点があいまいだからだろう」、「大塚千野の連作は母と娘の写真に見えるが、実は子供時代の自信の写真に、現在の姿を滑り込ませた合成なのだ」、「そして蔵真墨のスナップ写真も対象と距離をとっている」、「言論を巡って何かと話題の多い中国を生きる、もとの姿は男性でも心は女性の人々を追う菊地智子の写真が示唆に富む」。
 さて、私の感想は今年は豊作ではなかったというものだった。中国の性転換者を捉えた写真はおもしろかったが、少し踏み込みが足りない気がした。大野も発想は良いけれど、やはり物足りない思いがしたのだった。
 そんな辛口の評を持ってしまうのも、昨年の「日本の新進作家」展である「写真の飛躍」が充実していた印象が強いからだ。西野壮平、北野謙が優れていた。いや、毎年そんな優れた写真家が登場することを期待するのが間違っているのだろうが。
 東京都写真美術館では、同時に「北井一夫展:いつか見た風景」と「記録は可能か:映像をめぐる冒険vol.5」を開催している。これらも見たが、それほど興味を惹かれるものではなかった。
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東京都写真美術館の「写真の飛躍」展がおもしろい(2012年1月17日)