千葉市美術館の須田悦弘展を見る


 千葉市美術館で須田悦弘展が開かれている(12月16日まで)。須田悦弘について、「はてなキーワード」によると、

1969年山梨県生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。在学中に彫刻の課題でスルメをつくり、木彫りの魅力に開眼。木を彫り、彩色をし、まるで本物の植物のような彫刻作品を制作しているアーティスト。93年に移動式の展示空間をリヤカーで引き、銀座の道路沿いのパーキングメーターに駐車、展示する斬新な「銀座雑草論」。94年から99年まで中村哲也中山ダイスケら数人の作家と共にスタジオ食堂で活動。以後、国内外の展覧会に招待されて作品を発表し、高い評価を得てきた。

 私はこの93年のリヤカーの展示をリアルタイムでは見ていない。原美術館であった個展で初めて見たのだった。この「銀座の道路沿いのパーキングメーター」というのは、現在の奥野ビル前のことだ。今は大きなビルが建てられている。2回目の個展はギャラリイKであった。画廊の壁際に彩色された小さな雑草の木彫が置かれていた。
 須田は植物の精密な木彫作品を作っている。それに彩色していて、ほとんど実物と見まごうほどだ。ギャラリイKの個展でも、毎日水をやっているのですかと何人からも聞かれたという。
 今回の千葉市美術館の展示でもそうだが、須田はしばしば作品をわざと見つかりにくいところに設置する。壁の隙間とか椅子の下、展示されている屏風の後、窓の向こう側、天井近くなど。それはインスタレーションでもあるのだが、作品のあまりの精巧さに、普通の展示ケースに入れたのでは工芸品に見なされかねないという危惧にもよるものだろう。
 また専用の小部屋を作り、その奥に作品を設置したりしている。これは初個展のリヤカーで引いた展示空間がその原型になっている。この小さな空間には観客は一人しか入れない。千葉市美術館の展示でもそんな小部屋が数個あった。普段はここに客が列を作るという。私は勤労感謝の日の午前中、それも雨の中を行ったのだったが、それでも2、3人が並んでいた。
 隠されている場所の作品はほとんど見つけることができなかった。まず係の人にこの部屋の展示数を訊いてから作品を探すのだが、それが分かりにくいのだ。作品を探すクイズのような楽しみもある。





 いつもながら千葉市美術館のユニークな企画に敬意を表したい。どんな優れた学芸員がいるのだろう。
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ギャラリー小柳の須田悦弘展(2010年7月4日)
須田悦弘の木彫作品(2008年1月8日)
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須田悦弘
2012年10月30日(火)−12月16日(日)
10:00−18:00(金・土曜日は20:00まで)
第1月曜日(11/5、12/3)休館
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千葉市美術館
千葉市中央区中央3-10-8
電話043-221-2311
http://www.ccma-net.jp