原武史『団地の空間政治学』(NHKブックス)を読む。以前読んだ同じ著者の『滝山コミューン1974』が面白かったので期待した。ところが期待していた内容と違っていた。早とちりの私がいけないのだが、私は「団地の空間学」について書かれた本だと思ってしまったのだ。これは「空間政治学」なのだ。
以前の呼び名で公団住宅、現在のURの集合住宅の中でどのような政治的動向があったかを資料を駆使してていねいに分析している。団地の成り立ちから、地縁血縁がなく、住民も中流サラリーマンが多かったこと、通勤のための鉄道運賃の値上げ反対から保育所の建設の要請運動などを通じて、革新政党の支持層が多かったことを分析している。
読売新聞の書評でも小林佑基が高く評価している(10月21日)。
画一的な建物や間取り、周囲からの隔絶などの特性を持つ団地の「空間」が、自治活動などを通じ、1960〜70年代の革新的な「政治」意識を形成したと説く、前例のない考察。国内外50か所以上の団地を訪れ、自治会報などを丹念に読み込んだ。
私の求めているものは同時期に出版された原武史『レッドアローとスターハウス』(新潮社)にあるのだろう。今度はそちらを読んでみよう。
・原武史「滝山コミューン1974」を読む(2011年7月16日)
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