たけだ美術でドナルド・ジャッドを見る

 東京銀座7丁目のたけだ美術で「Mini × Mono」展が開かれている(11月9日まで)。Mini × Monoは「ミニマリズムモノクローム展」を意味しているという。取り上げられている作家は、ドナルド・ジャッド、李禹煥(リ・ウーハン)、菅木志雄の3人だ。このジャッドを日本の画廊で見られるなんて驚いた。木のレリーフ作品と版画作品だ。写真はたけだ美術発行のカタログより、6点組のレリーフ作品のうちの4点。

 ドナルド・ジャッドはアメリカのミニマル・アートの作家。20年ほど前に静岡県立美術館での個展を見た。1999年には埼玉県立近代美術館の個展も見ることができた。東京都現代美術館の常設では壁に10個の箱が取り付けられた立体作品を見ることができる。いずれにしろ、美術館で見るものだと思っていたジャッドを東京の小さな画廊で見られるなんて、思わず声をあげてしまったほどだ。ほとんど事件とでも呼びうると感じたくらい。
 ジャッドは空(から)の箱の作品で有名だ。徹底的に意味を排除した作品を作ったのだった。東京都現代美術館のジャッドの作品については、『東京都現代美術館収蔵作品選 1995』(同館発行)に塩田純一が簡潔に書いている。


何の変哲もない四角い形、鋭いエッジ、青味を帯びた冷たい光沢。工業製品のようにクールで無表情なスティール製の箱が10個、等間隔で縦に1列、壁に取り付けられている。それらは何か具体的な物の形を表しているわけでも、何かを象徴しているわけでもない。私たちが身を置く現実の空間に、物それ自体として存在しているのだ。
 絵画は本来二次元の平面にすぎないが、色が塗られ、線が引かれ、形が描かれることで奥行きが生じ、三次元のイリュージョンが生まれてくる。画家として出発、その一方で哲学を学び美術批評もてがけていたジャッドは、こうした絵画の宿命から逃れるべく、絵画でも彫刻でもない三次元の物体に到達した。工業的な素材による極限にまで還元された単純な形。その反復が造り出す揺るぎない全体性と秩序は、緊張感に富む非妥協的で厳密な美をもたらした。いわゆる〈ミニマル・アート〉の典型的な作品である。

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「Mini × Mono」
2012年10月22日(月)−11月9日(金)
11:00−18:00(日曜・祝日休廊)
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たけだ美術
東京都中央区銀座7-10-11 日本アニメーションビル1F
電話03-6280-6663
http://www.takeda-bijyutu.com