ncaで木村太陽展が始まった


 東京八丁堀のnca(nichido contemporary art=日動コンテンポラリー・アート)で木村太陽展が始まった(9月21日まで)。木村は1970年神奈川県生まれ、1995年に創形美術学校研究科を卒業している。1996年〜1998年頃、京橋のギャラリー山口で個展を繰り返していた。最近では京橋のギャラリーASK?で2人展をしている。
 ncaで配布しているテキストから、

木村太陽は、日常にある何気ない出来事や事象、経験のなかに内在する違和感やそこから生まれた感情を切り取り、身近にある素材(方位磁石やぬいぐるみ、はかり、ハサミ、計算機などの日用品)を用いて作品へと変換させます。木村のスケッチブックには、日記のように毎日の日常生活のなかで目にした出来事や感情、そこから派生した空想世界のイメージなどが木村のフィルターを通して隙間なく描かれています。
作品には、一見ユーモア/ブラックユーモアにあふれ、私たちを笑いの渦へと引き込みながらも、そこには現代社会の不条理性、不快感や不安が明確に表現されています。
木村はこれまでに身体を物質的な要素と捉え、自身または他者の身体の一部を表した作品を多く制作してきました。近年ではその反動のように、人間の内にあるかたちにならないものに興味を持ち、脳内で意思とは別に身体を拘束、コントロールする事象や夢の中での体験、または目に見えない何かのルールにしばられているような自身の感覚などを描きとめてきました。 今展覧会ではその膨大なスケッチブックのなかから選出し、作品化した新作を発表いたします。

 木村の作品をひと言で言えばブラックユーモアだろう。カレーで顔を洗うパフォーマンスとか、2000年の東京都現代美術館MOTアニュアルでは壁に頭をめり込ませた小父さん人形たちがズボンにお漏らしをしていた。
 今回は猫缶にフェイクファーを貼り付け、それを猫の形に積み上げている。また見た夢をスケッチして説明を付けているが、左右逆の鏡文字になっているので、鏡に映さないと読むことができない。福沢諭吉の下手なドローイングが何枚も展示してあるが、これは木村が鉛筆を持ち、知人がスケッチブックを持って動かし福沢諭吉を描いたもの。木村と知人たちとの合作になるが、一人とても上手いのがいた。




 冒頭に提示したDMハガキの鏡文字を読んでここに紹介する。木村太陽が見た夢。

実は人はみな焼きタラコ。握手とかするたびにポロポロ崩れていたるところがタラコのかすだらけ。
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眠っているあいだに脳がお出かけをする。そのあいだ空っぽな頭の中に知らん脳たちがやってきて、勝手に飲み会とかカラオケとかに使われてしまう。
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死んだはずの母が苦しんでのたうち回り続け、ちっ息しそう。ぼくはおろおろするばかりで何もできない。仁王だちのタンスがこわい。
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新興住宅地の石垣。新しいからか、重々しさがない。そのすき間から小猫がヒョコヒョコ出てくる。猫ってこうやって生まれるんだ。
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クリップで挟まれてはなれてできたおできが能登半島

 2009年のギャラリーASK?での2人展を紹介したエントリー
おかしなおかしな木村太陽展(2009年1月22日)
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木村太陽展"New Works"
2012年8月31日(金)−9月21日(金)
11:00−19:00(日・月・祝日休廊)
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nca : nichido contemporary art
東京都中央区-3-3 B1F
電話03-3555-2140
http://www.nca-g.com