大矢雅章のオブジェ展を見た、また高島進の銀筆のドローイングも

 六本木のShonandai MY Galleryで大矢雅章展が開かれている(20日まで)。大矢は1972年神奈川県生まれ、1998年に多摩美術大学大学院美術研究科絵画専攻を修了している。深沢幸雄・森野眞弓・渡辺達正氏より銅版画を学ぶと略歴にある。その後文化庁新進芸術家インターンシップ研修員制度により加納光於氏に師事。また文化庁海外留学制度でパリに滞在した。
 1999年に銀座のすどう美術館で初個展。これは強く印象に残っている。優れた銅版画家が現れたと喜んだ。その後、版画の老舗養清堂画廊などで何回も個展をしてきている。






 ところが今回は主たる展示が銅版画ではなかった。不思議な形のオブジェが並んでいる。素材をみると「鉛・蜜蝋・団栗・木」とある。団栗は木の実のドングリだ。自宅近くの切り倒された切り株の断面から発想したという。そういわれれば確かに木材の断面だし、丸い突起はドングリらしい。個展のタイトルは「−星霜への考察 After 3.11−」とされている。「星霜」は歳月のこと。東日本大震災後の歳月を木の年輪と重ねて造形しているのだろう。しかし、モチーフが何であれ、オブジェの形がおもしろい。いや、モチーフはどうでもいいと言うつもりはない。モチーフも形も大事だろう。作品はいま面白い方向を向いていると思う。さらに掘り下げて、このオブジェの展開を見せてほしい。
 またいつもの銅版画の個展も見たいと思う。今回は銅版画の小品と油彩も展示されていた。油彩にはあまり興味を惹かれなかった。
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 なお、画廊の奥のスペースでは高島進展「−銀筆と紙のためのドローイング−」が開かれていた。高島の個展については以前紹介したことがある。
白銅てい画廊の高島進展が興味深い(2011年11月28日)
 今回は銀の筆「銀筆」を使ったドローイングの小品展だ。筆や色鉛筆を使った前回の個展もおもしろかったが、今回の小品の完成度は前回を上回ると思う。この高島の作品はとても繊細なもので、写真でそれを伝えるのは難しいと思われる。ぜひ画廊に足を運んで実物を見てほしい。
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大矢雅章展「−星霜への考察 After 3.11−」
高島進展「−銀筆と紙のためのドローイング−」
2012年5月9日(水)〜5月20日(日)
12:00〜19:00(最終日は17:00まで)会期中無休
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Shonandai MY Gallery
東京都港区六本木7-6-5 六本木栄ビル3階
電話03-3403-0103
http://www.shonandai-g.com/