『昆虫食入門』を読む

 内山昭一『昆虫食入門』(平凡社新書)を読む。私も山国の出身で、子供の頃から、イナゴ、蜂の幼虫(蜂の子)、蚕の蛹(ひび)、カミキリムシの幼虫(ゴトウムシ)などを食べ慣れていた。長野県は海がないせいか、タンパク質を昆虫にも求める食の習慣があったのだろう。幼い頃から食べ始めたそれらに対しては今でも違和感がない。
 しかし、この本の内容には心底驚かされた。内山昭一は名前から昭和元年生まれかと思ったら、昭和25年生まれだった。私同様長野県出身で、幼少より昆虫食に親しみ、「昆虫食の普及・啓蒙に努めている」という。
 世界各地の昆虫食の歴史や現状が報告される。世界で食べられてきた食用昆虫の一覧表がある。そして主な食用昆虫が紹介されている。イナゴやハチの子はそんなに珍しくもないと思うが、クリシギゾウムシの幼虫が食べられるなんて知らなかった。栗の実の中に入っている白い象虫の幼虫だ。「これを煎って食べると、脂肪が多く実においしい。(中略)噛むと硬めの皮がプチッと裂けてクリーミーな味が舌に広がる」。カブトムシの幼虫はまずく、セミはうまいという。セミフライやセミ天の揚げたてがうまいそうだ。
 一番驚いたのがゴキブリを食べること。林晃史『虫の味』を引用して、ゴキブリ料理を列挙する。刺身、塩焼き、から揚げ、ゴキブリ酒。このうち、刺身の項を紹介する。

刺身−−クロゴキブリの頭、翅、脚、消化器を取ると寿司ネタのシャコに似てくる。これを塩水でよく洗い、ぽん酢で食べる。特有の臭気が残るものの、ホヤの刺身と思えば気にならない。

 さて、アメリカの食品医薬局が食品等に対する昆虫などの混入の許容レベルを決めているという。「芽キャベツ100gにつきアブラムシ類とアザミウマ類が合わせて40匹まで」だという。
 なかなか濃〜い本であった。

昆虫食入門 (平凡社新書)

昆虫食入門 (平凡社新書)