藤森照信『フジモリ式建築入門』(ちくまプリマーブックス)を読む。これが分かりやすく面白かった。藤森照信は東大の建築史の先生(現在は名誉教授)。だから建築に関しては詳しいのが当然。そのフジモリ先生が中高校生向けに建築をやさしく語ってくれる。それが無味乾燥な教科書風ではなく、主観をまじえておもしろく語ってくれるのだ。
ギリシャ建築は列柱の上にペディメント(三角破風)が載る。ただそれだけで他の造型要素はない。それを継ぐローマでは、むくの石で作られていたギリシャに対して、煉瓦とコンクリートが追加される。造形的にはアーチとドームとヴォールトが加えられる。
ギリシャ建築にくらべローマ建築は実用性では優れていても美的に劣るとする評価もあるが、絵や彫刻とはちがう建築ならではの問題として考えるなら、内部空間の発生、天上界の実現、構造表現、の3点によってギリシャ建築と十分並ぶ貢献をした。もし、アーチがなければ、ローマの市中には、エジプト帝国と同じような柱はただ太くてて壁は厚い建物がすき間なく建ち、異様な光景を見せただろう。
ローマ建築はキリスト教に引き継がれる。ロマネスク洋式とビザンチン、ゴシック様式等々と進んでいく。本来教科書的な記述に陥るところをフジモリ先生はやさしくわかりやすく語ってくれる。
4世紀以後、キリスト教が行った建築創生の実験は、やっとふたつ目の花をもたらした。ひとつ目のビザンチンは、集中式平面の上にドーム構造の工夫を重ね、天上の国の姿をモザイクと金と光によって描き、ふたつ目のゴシックは、バシリカ方式平面の上にヴォールト構造を駆使し、上昇する線と多彩な透過光によって神の国を地上に再現した。
こんな風に引用すると何だか難しく思われるかもしれないが、様々な用語は図や写真を使ってていねいに説明してくれている。ふと以前読んだポストモダンの建築家の本を思い出した。その人の本は難しくて何を言いたいのか理解しにくい。おそらく持って回ったくどい発想をする人なのだろう。そういう意味では明晰なフジモリ先生の対極にある人だ。
ちょっとだけ、いがらしみきおの『ぼのぼの』(竹書房)の1コマを連想してしまった。
いや、この人は自分の考えが分かっていないなどと恐れ多いことを言うつもりはない。難しくて何を言いたいのか(私が)理解できないことから、シマリスくんを連想してしまったまでだ。
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