東京国立近代美術館のジャクソン・ポロック展


 東京国立近代美術館ジャクソン・ポロック展を見た。ポロックは1912年生まれのアメリカの抽象表現主義を代表する画家。ドリッピングの方法で大きな成功を収めたが、1956年自動車事故で急死した。今年が生誕100年に当たる。
 本展ではドリッピングを始めるまでの前期の作品が多く集められている。それらは言ってしまえばつまらないものだ。ポロックピカソを目標にしていたという。そして1947年、35歳のときドリッピングを始める。床に拡げた大きなキャンバスに絵の具を降り注ぐ「アクション・ペインティング」だ。それは誰もやったことのない表現だった。その試みは成功し、1950年の個展で絶賛を博す。
 しかしポロックはその後別の表現を模索する。それらはポロック自身を満足させないし、美術評論家の評価も得られない。ポロックはスランプに陥り、絵も描けなくなる。やめていた酒を飲み始める。飲酒運転で女友達を乗せて疾走していて、自動車事故を起こし急死してしまう。
 今回の展示ではドリッピングの大きな作品が少ない。目玉作品がイランのテヘラン現代美術館から借りたものだ。アメリカにたくさんある代表作がなぜ並ばなかったのだろう。
 ポロックピカソを目標にしていたという。しかしピカソの豊かな展開に比べてポロックの表現は貧しい。ドリッピングはそれ以上の展開が期待できないし、画家としてもマンネリを感じていたのだろう。数年間でその手法を捨てている。
 もしポロックがヨーロッパで作品を発表していたら、これだけのビッグ・ネームを獲得できただろうか。やはり戦後のアメリカだからこそ、国を挙げて押し上げてもらえたのだろう。CIAの予算まで付けてPRされたという。アメリカが経済ばかりでなく、アートでも一流という地位を得るために。
 そう言いながらポロック展が日本で見られたのは良かった。生意気なことを言えるのも今回の回顧展が見られたからに他ならない。一度は見ることをお勧めする。
 会場を出たところで老夫婦がポロック展のちらしを見ていた。裏面のスミ1色のページを見て男性の方が汚いデザインだとつぶやいていた。私もその意見に賛成する。まるで女性週刊誌の広告みたいだ。
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ジャクソン・ポロック展(東京国立近代美術館開館60周年記念展)
2012年2月10日(金)−5月6日(日)
10:00−17:00(金曜は20:00まで)
月曜日休館、ただし3月19日、26日、4月2日、30日は開館