国内ミステリー部門ダントツの第1位『傍聞き』を読む


 新聞の書評に紹介されていて読んでみたいと思って買った長岡弘樹『傍聞き(かたえぎき)』(双葉文庫)。買ったけれど、帯の惹句が「おすすめ文庫王国2012国内ミステリー部門ダントツの第1位」「この20年で最高の傑作! 仕掛けと感動の珠玉短編を堪能せよ」だった。それで読むのを躊躇(ちゅうちょ)していた。以前「このミス2009年度第1位」と帯に惹かれて読んだ『向日葵の咲かない夏』がさんざんだったのだ。それで帯に書かれた絶賛のコピーに少々トラウマを持ってしまった。
 本書は4篇の短篇が収録されている。「迷走」「傍聞き」「899」「迷い箱」とあり、標題となった「傍聞き」と「迷走」が良かった。構想が優れていて、ラストが全く読めなかった。見事なものだ。「傍聞き」で2008年度日本推理作家協会賞短編部門賞受賞というのが素直に納得できた。ただ「この20年で最高の傑作!」というのはオーバーだけど。
 少々難癖をつければ、タイトルが難しすぎる。さらに会話がもう少し気が利いていたり、文体が良ければ、『アデン・アラビア』でポール・ニザンが書いたように「誰にも文句を言わせない」と言い張れるのに。
 双葉文庫にもこんなに面白い本があったのだ、と権威主義者で偏見の強いオッサンが感心していた。
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「向日葵の咲かない夏」への不満(2009年5月30日)
 このエントリーには43人からコメントが付けられたが、私の「つまらない」という意見に賛成してくれた人は少数で、過半数が「おまえの理解力不足だ」と書いていた。


傍聞き (双葉文庫)

傍聞き (双葉文庫)

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)