hayakarさんが亡くなった

 hayakarさんが亡くなった。ブログの「hayakarの日記」を書いていた早川さん(id:hayakar)だ。9月11日に亡くなったという。三上さん(id:elmikamino)と中山さん(id:taknakayama)が教えてくれた。早川さんが亡くなったと聞いてもなかなか実感が湧かなかった。
 それが10月29日付けの中山さんのブログ「hayakarさんへの小さな弔辞」やブログ仲間たちの追悼文を読んでようやく早川さんの死が実感された。早川さんと知り合ったのは私がブログを始めた2006年の半ば頃だったと思う。私のブログにコメントしてくれた人がいて、それが「よこしまなシマウマ」というブログを書いていたmai_aokiさんだった。青木さんのネット上の知人が早川さんだった。
 早川さんと初めて会ったのは、中山さんが書かれているのを読むと2008年1月5日だった。中山さんと3人で会って飲んだ。有楽町駅前の三省堂で待ち合わせ、中山さん行きつけの店で飲んだ。初対面なのにもう2年間もブログを読み合っていてすぐに打ち解けたと思う。楽しい酒だった。その時の様子を早川さんが描いてくれた。


新年会「hayakarの日記」(2008年1月5日)
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中山さん、mmpoloさんとの新年会に、お誘いいただき、喜んで参加させていただく。
17:30、有楽町の三省堂で待ち合わせ。
私にとっては、ご両人は初対面なのだが、お二人は何度か会っている御様子。三省堂で、それらしきお二方を見つけたので、声をかける。
中山さんからは、「ブログの絵に似ていますね」と言われる。
mmpoloさんは、プロフィール画像のおっさんが現れると思われたようで、意外な反応をされる。
そういえば、猫ヶ原さんに会った時も「プロフィールの顔と違う」と言われたっけ。
有楽町ガード下の飲み屋で、お二方からいろんな話を聞かせていただく。
やはり、自分の知らない経験をしてらっしゃる方の話ほど面白いものはない。
とても有意義な夜でした。

 とても楽しい夜だった。後ろ姿が私だが、驚くほど似ている。正面が早川さん、私の陰に隠れているのが中山さん。早川さんのデッサンの腕は確かなものだった。しかも、おそらく映像記憶にも優れていたのだろう。だから映画のシーンもありありと憶えていたのではないか。
 最後に会ったのは昨年の12月18日だった。新宿西口の小便横町で三上さんと中山さんと4人で飲んだ。しばらく具合が悪かったと言っていたが、まさかそれが最後になるとは思わなかった。
 早川さんは本当に映画が好きだった。雑誌「マリ・クレール」の映画特集で、淀川長治蓮實重彦の対談が載っている1990年7月号を貸すから読んでほしいと言ったら、早川さんも読ませたい雑誌があるから貸し借りしようと言った。それは何回目に会った時だったか。貸してくれるからと雑誌の題名をメモしなかったので、早川さんが私に何を読ませてくれようとしたのか分からなくなってしまった。ささいなことだがそれが悔やまれて、そのことを考えると本当に早川さんは去っていってしまったのだと悲しくなる。
 以前だいじな友人が亡くなったとき、尊敬する岳父が細く長く涙を流すのが亡き人への供養だと教えてくれた。早川さんを識ることができて良かった。
 ここまで書いて「hayakarの日記」を読み直したら、2009年4月19日にその雑誌のことが書かれていた。そうだ、シティ・ロードだって言っていた! 早川さんの日記から、

今は無き『シティ・ロード』の1991年4月号。淀川さんのロングインタビューが載っています。私が死んだら蔵書は全部焼き捨ててもかまわない。この1冊だけを棺桶に入れてほしい。
〈コメントを書く〉
mmpolo  羨ましいけど、私も1990年7月号の「マリ・クレール」を持っています。淀川長治蓮實重彦の11ページにわたる対談が載っています。今度お互いに貸し借りしませんか?

hayakar  mmpoloさん、こんばんわ。
以前、お話になっていた雑誌ですね。
>今度お互いに貸し借りしませんか?
いいですね。お互い家もそんなに離れていないことですし、私も読んでみたいです。
ただ、シティロードの場合、ロングインタビューっていってもそんなに長くないですよ。
淀川氏の著作なら、いっぱいあるのに、なんでシティロードなの?って思われるかもしれないけれど、このインタビューで淀川さんが、ベルトルッチの『シェルタリング・スカイ』のことを激賞しているからです。
シェルタリング・スカイ』について語ると、また長くなるから、いつか機会がありましたら。

 よし、それでは『シティ・ロード』の1991年4月号を探して読んでみよう。
 また、2009年4月14日の日記にはこう書かれていた。

吉祥寺に到着。どこに寄るでもなく大正通りを西に向かう。前に通っていたカットハウスの前を通りすぎ、しばらくしてから左折。中道通りの吉祥寺西公園でコブシとシラカシの木を見上げて一休み。しばらくしてから井の頭公園に向かう。桜の見頃を過ぎたとはいえ、前からの癖で池の周辺を避け、少し離れた雑木林に向かう。陽気のいい時期には、ここで缶ビールを飲みながら本を読んだ。
死んだら、幽霊になってここらへんのベンチに座ってる予定。

 分かった。来年の春に井の頭公園へ行って、池から離れた雑木林のベンチに座り、缶ビールを飲みながら早川さんの幽霊が現れるのを待とう。そして映画の話をたっぷり聞かせてもらおう。


・hayakarの日記
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