銀座3丁目のコバヤシ画廊で野沢二郎展[水面の陰翳]Shadows on Water surfaceが開かれている(10月29日まで)。野沢は茨城県生まれ、今年53歳になるという。1982年に筑波大学大学院を修了している。これまで「VOCA展'97」や同年の「バングラディシュ.アジア美術ビエンエーレ」に参加し、コバヤシ画廊では2000年以降毎年個展を開いている。さらに来年にはDIC川村記念美術館の企画展「抽象と形態」にも出品が予定されている。作家のコメントから。
「水面」をテーマにした油彩画の展覧会。絵画とは自然や社会や自分自身を映す鏡であり、水面を絵画のメタファーであると考える。「陰翳礼讃」(谷崎潤一郎)を引くまでもなく、日本的な感覚は陰影と結びついている。水面に揺れる陰影のような不確定なものを、油彩画の持つ強靭なマチエールで定着させたい。
野沢の作品の前に立つと画面のなかに水面が立ち現れてくる。しかし、その水面を具象として確定しようとすると、目の前にあるのは抽象的な色面なのだ。水面であり色面であるという「あわい」を画面に定着させるすべを野沢は身につけていた。
色彩は昨年とまた変わっている。あの華やかな緑が消えてしっとりと落ち着いた色になっている。野沢の作品を経年的に並べてみたらきっと面白いに違いない。そんな機会がやがて訪れるだろう。
野沢は長い間地味で目立たない画家だった。それがいまは確実に中堅の抽象作家になってきている。毎年その変化と高い完成度が確認できるのが楽しみだ。
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野沢二郎展[水面の陰翳]Shadows on Water surface
2011年10月24日(月)〜29日(土)
11:30〜19:00(最終日〜17:00)
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コバヤシ画廊
東京都中央区銀座3-8-12 ヤマトビルB1
電話03-3561-0515
http://www.gallerykobayashi.jp/