野菊の害虫ハダニ

 ベランダの鉢植えの野菊の葉が黒ずんでいる。ルーペで見ると赤い小さな粒々が見える。これはハダニだ。葉を加害するので葉ダニ、動物には寄生しない。だが植物にとっては大敵で、大量に発生すると葉が黒ずんだり、逆に白っぽくなったりする。当然生育にも影響する。花が咲かないこともある。

野菊の葉がハダニの寄生によって黒ずんでいる。

健全な野菊の葉
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 ハダニはクモの仲間で脚が8本ある。昆虫とは別の種類の虫で、いわゆる殺虫剤が効かない。殺虫剤では死なないのだ。どうするか? 殺ダニ剤を散布する。
 さて、この殺ダニ剤だが、一部の製品を除いて成虫や若虫(幼虫にあたる)には効果があるが、卵には効かない。ハダニは産卵されて孵化するまで1週間弱なので、1度目の散布から1週間後にもう一度散布する。これで生き残った卵から生まれた若虫も防除することができる。
 実はハダニは近代の害虫なのだ。もともとハダニは大量に発生することが少なかった。それが変わったのは殺虫剤が開発された戦後からだ。殺虫剤の散布によってハダニの天敵である昆虫が駆除されてしまい、それで大量に発生するようになったのだ。
 とくに、今から30年ほど前に住友化学が開発したピレスロイド剤の登場が画期的だった。あまりに優れた殺虫効果のために害虫はもとより天敵昆虫も駆逐されてしまい、ピレスロイドが多く使われた日本中の果樹園でハダニの大量発生が見られたのだった。この現象をリサージェンスresurgenceと言う。殺虫剤の使用によって害虫が増加する現象のこと。
 最近は農薬に対する批判が強くなっている。このため40年ほどまえに街路樹等に大発生したアメリカシロヒトリに対しては、自治体が殺虫剤を散布して防除したのに対し、ここ10年ほど目立っているやはり街路樹のプラタナスに大発生しているプラタナスグンバイという侵入害虫に対しては、何の対策も取れないでいるのが現状だ。
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プラタナスグンバイ(成城の動植物)
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