「ふしぎなキリスト教」がおもしろかった

 橋爪大三郎×大澤真幸「ふしぎなキリスト教」(講談社現代新書)がおもしろかった。キリスト教をめぐる二人の社会学者の対談だ。「まえがき」で大澤は、「われわれの社会」とは「近代社会」であり、近代というのは西洋的な社会というものがグローバル・スタンダードになっている状況だという。ではこの近代の根拠になっている西洋とは何かといえば、その中核にあるのがキリスト教だ。「西洋とは、結局、キリスト教型の文明である」。

 近代化とは、西洋から、キリスト教に由来するさまざまなアイデアや制度や物の考え方が出てきて、それを、西洋の外部にいた者たちが受け入れてきた過程だった。大局的に事態をとらえると、このように言うことができるだろう。

 ところが日本人はこの近代の根っこにあるキリスト教が分かっていない。それで二人の対談によって、キリスト教というものが何であるか、キリスト教が社会の総体とどのようにかかわってきたかを解説した。本当におもしろかった。何度も目から鱗が落ちた。どんなに分かっていなかったかがよく分かった。
 ユダヤ教イスラム教に比べてキリスト教は宗教法が強くないので、自由に法律を作ることができたとか、宗教改革による宗教戦争の負け組が新大陸へ大挙移住したのでキリスト教徒が新大陸に広がったとか。
 350ページと新書としては厚いが、内容がおもしろく、そして対談であるのでとても読みやすい。「あとがき」で橋爪が書いている。

キリスト教入門」みたいな本なら、山ほど出ている。でもあんまり、役に立たない。「信仰の立場」を後ろに隠して、どこか押しつけがましく、でもにこにこ語りかける。さもなければ、聖書学あたりの知識を、これならわかるかねと上から目線で教えをたれる。人びとが知りたい、いちばん肝腎なところが書かれていない。根本的な疑問ほど、するりと避けられてしまっている。
 そこで大澤さんと相談して、対談が実現した。

 日本人にひろく勧めたい。


ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)

ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)