大沢在昌「新宿鮫」を読んだ

 大沢在昌新宿鮫シリーズの最新作「緋回廊 新宿鮫X」(光文社)について、毎日新聞の書評で丸谷才一がほとんど絶賛している(2011年7月17日)。

戦後の日本は多くのすぐれた娯楽読物を持ったけれど、シリーズものの主人公として、新宿鮫はあの剣豪眠狂四郎、あの名探偵金田一耕助をしのぐほどのスターだろう。
 どうしてこういう事態が生じたか。第一に作者の文体がいい。小説の文章として小粋である。(中略)
 第二に小説の作りがうまい。(中略)
 第三に構えが大きい。歌舞伎町とゴールデン街を起点として東京を描くこの都市小説は、東南アジアの現在全体を扱う。(中略)21世紀の市井風俗を題材とすると見せかけて実は日本近代史全体をとらえようとしている。

 それでこの有名な警官小説の第1作「新宿鮫」(光文社文庫)を初めて読んだ。テレビドラマ化されたものは見た記憶があるが、それと小説とは別物だ。
 読んでみて面白かった。★4つ(満点は5つ)。いや面白かったのだが何しろ著名な作品で期待が大きかった。カッパ・ノベルスで発行されたのが21年前の1990年9月、その頃としてはおそらく画期的な警察小説だったろう。ベストセラーになりシリーズ化し、シリーズ4冊目の「無間人形」で直木賞を受賞した。
 それで他の作家たちが研究したのだろう。私が知っているだけでも、今野敏横山秀夫佐々木譲、等々がいて見事な警察小説を書いている。彼らの作品を読んだ後では大沢在昌の本作に★5つを付けることができなかった。もっとも鮫の新作は丸谷才一が絶賛しているように傑作なのだろう。 こんなにほめられれば早く読みたいとは思うものの、やはり2巻から読んでいくべきなのだろう。

新宿鮫 (光文社文庫)

新宿鮫 (光文社文庫)