「ひげの生えたパイプ」って何だろう

 昨日紹介した安部ねりの「安部公房伝」(新潮社)に元NHKのディレクター長与孝子にインタビューしたものが載っている。長与によれば、1959年にNHKの連続ラジオドラマとして放送された「ひげの生えたパイプ」は公房が書いたのだった。

 それからご一緒に単発のドラマを何本かやって、1959年にラジオドラマの「ひげの生えたパイプ」を書いていただきました。太郎君が主人公。お父さんはダム工事で遠いところに行ってしまって、太郎君が寂しいなって、お父さんのおいていったかびの生えたパイプをけっ飛ばすと、パイプが口をきく、というところから始まるんです。題名をどうしようかっていうことになったので、かびが生えてるパイプじゃつまんないから「ひげの生えたパイプ」でどうですかって私が言ったら、安部さんあっはっはってお笑いになって…あとで、いや、あのときは驚いたよ、NHKであんなタイトルよく許したって思わなかった?って言われました。聞いたらなんか変な意味があるんだそうです。

 当時小学校5年生だった私はこのラジオドラマをわくわくして聴いていた。古びたパイプが太郎君のいろいろな願いを叶えてくれるんじゃなかったかな。なんせ、50年も前のことなのでおぼろにしか憶えていない。でも時代的には藤子不二夫のドラえもんの秘密のポケットはこのドラマに影響を受けているのかもしれない。
 主題歌をかすかに憶えていて「すぱっ、すぱっ、ふう、すぱっ、すぱっ、ふう、赤い目玉に煙の尻尾」と歌っていた。でも変な意味なんて知らなかった。何だろう。
 パイプってくわえて使う。口からパイプが出ている。そのパイプにヒゲが生えている。あ、分かった。
 田舎の純朴な小学校5年生に分からなかったのは無理もない。日本中の小学生の誰一人わからなかっただろう。それから5年後に書かれた吉行淳之介の「砂の上の植物群」にすらそのような行為は行われていなかったのだから。