読者投票1位のSF「星を継ぐもの」を読んで

 2009年に「創元SF文庫を代表する1冊は何か?」という読者アンケートで1位を獲得したというジェイムズ・P・ホーガン「星を継ぐもの」(創元SF文庫)を読む。読み始めてすぐのシーン、月面の岩山を倒れそうになりながら歩く男の姿をかすかに記憶している気がした。パソコンで書いている日記を検索すると10年ほど前に読んでいた。しかし記憶はそれだけだった。ほかに何もおぼえていなかった。
 裏表紙に印刷されている惹句は、

月面で発見された深紅の宇宙服をまとった死体。だが綿密な調査の結果、驚くべき事実が判明する。死体はどの月面基地の所属でもなければ、ましてやこの世界の住人でもなかった。彼は5万年前に死亡していたのだ!

 なぜそんなことが成り立つのか? 物語は二転三転する。最後に驚くような答えが提示される。作家ホーガンの想像力に圧倒される。だが、とあえて言いたい。物語は二転三転すると書いたが、本当はアクロバットのような展開を見せるのだ。月の移動はどう考えても無理がある。なぜ本書が1位に選ばれたのだろう。
 ではお前は誰を1位に推薦するのか。そう聞かれたら困ってしまう。SFとミステリが好きと言いながら実はたいして読んでいないのだ。高校生の時初めてSFを読んで圧倒された。こんな世界があったのか。A. C. クラーク、ハインラインシェクリイブラッドベリ、ハル、レム等々。好きだと思っていたが、本当はそんなに好きではなかったのかもしれない。たくさん読んでないのはそれが理由なのだろう。
 スタニスワフ・レムは例外でほとんどすべてを読んでいる。ほかに好きなのはストロガツキイ、フィリップ・K.・ディック、カート・ヴォネガット、一時期ウィリアム・ギブスンブルース・スターリングにはまったけれど、今はもう読んでいない。そのような趣味からは「星を継ぐもの」を高く評価できなかったのだった。

星を継ぐもの (創元SF文庫)

星を継ぐもの (創元SF文庫)