真似のできないテクニック

婦人公論」5月22日号に読者告白が組まれていて「私の扉を開いた忘れられない絶頂感」という何とも(男にとって)魅力的な記事が載っている。「水の刺激で知った初めての感覚」とか「さわやかな彼の意外な一面に……」とか「犬似の男性に見られ、甘えられて」などの告白に加えて「バーテンダーに『顔』で悩殺されて」という面白いエピソードが紹介されていた。安藤由美(仮名)48歳・独身・住宅メーカー勤務という人だ。
 40歳の時、婚活をあきらめ独身の悪友とよく飲み歩いていた。友人がある時、私が熱狂的に愛する福山雅治そっくりのバーテンダーがいるというバーを見つけ、二人でくりだした。彼は福山そっくりで、長身で笑顔がセクシー、一挙一動がスマートな32歳。「彼を見ながら飲むお酒はまるで媚薬でした」と書く。
 友人が私が抱かれたがっていることと連絡先を書いたメモを渡してしまった。数日後の夜「これからマンションへ行っていい?」と電話がきた。

 30分後にやってきた彼は無遠慮で、相当女慣れしているみたいでした。でも顔がすてきで許せちゃうんです。のぼせる私をからかうように、歯の浮くような甘いセリフを吐き、自分のひざに私を座らせ、髪や胸にタッチ。首すじにキス。みるみる服を脱がされて、あれよという間にベッドイン。
 とはいえ、すぐに上に乗られて前戯もなく挿入で、それにはビックリでした。私はもちろん感じるも感じないもありません。だけど「俺の目を見て」と言われて見つめ合うと、大好きな美しい顔に目がくらんでしまって、全身が沸騰しそう。視線を絡ませるうちに潤いがじゃんじゃんあふれだすし、動きながら私に軽く笑いかけたり、怖いくらい真剣に見つめたりする彼に、天にも昇る心地。すっかり酔わされて、アソコもフワーッと気持ちよくなっていって。
 やがて、ため息まじりに「ああいい、俺イキそうだよ」と彼がささやき、その切ない表情を見た瞬間……まさに悩殺でした。あまりの色気に私も感極まり、思いがけず一緒に達してしまったのです。
 それまで念入りな前戯で絶頂に導かれたことはありましたが、顔の良さだけでそうさせたのは彼だけです。今思えば、アイドルの歌に熱狂して失神したようなものかもしれません。

 その後、ヒモみたいなおねだりをし始めた彼に現実に引き戻され、二度目以降は自制をしたらしいけど。
 彼のこの天性のテクニックは、私がどんなに真似しようとしても、残念ながら絶対に真似できるテクニックではない。中天高く飛翔する鷹を見上げながら亀はのろのろと地上を歩くしかないのだ。