河原温の成功

 アメリカで美術家として成功するための必須条件とは、決して類似した表現がないことだという。誰かの作品を連想させたら絶対にだめなのだ。おそらく森村泰昌アメリカでは評価されることはないだろう。しかし、このアメリカの基準は厳しすぎると思う。日本の緩やかな基準の方を良しとしたい。
 そのアメリカで成功した日本人の美術家と言えば草間弥生河原温が筆頭だろう。草間は水玉模様と網目模様で作品を作った。類似の作品を作る作家はいなかった。河原温は日付絵画を作った。黒い画面に白い活字体でその日の日付を描いたのだ。1日に1枚以上は描かない。例えば今日なら、

   APRL5, 2011


と、だけ描く。
 コンセプチュアル・アートだ。それまで誰もこんなばかばかしい事はしなかった。誰もしなかったことで、河原はアメリカで大きく評価された。しかし、評価はそのまま経済的成功には結びつかない。以前アメリカでも売れたのはポップ・アートで、抽象表現主義は評価こそ高かったが売れ行きは悪かったと聞いた。
 さて、河原温は経済的にはどうだったろう。正確には知らないが、おそらく成功しているだろう。誰にも記念日がある。家族の誕生日、結婚記念日、大切な人の命日、競馬で大穴を当てた日、ホールインワンを出した日等々。プレゼントや部屋に飾るのにこんなに適切な美術作品はないだろう。「その日」を世界的に有名な画家が作品に仕立ててくれているのだ。数年前で1点が150〜160万円だと言われた。値段もちょっと高めで、記念品兼美術作品としてぴったりではないだろうか。河原の名誉のために書き添えるが、彼はそんな効用など全く考えていなかっただろう。
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河原温の作品
http://tokyo75.exblog.jp/5573817