伝説の女優の伝記「原節子 あるがままに生きて」を読む

 貴田庄が書いた伝記「原節子 あるがままに生きて」(朝日文庫)を読む。「伝説の女優」と言われた原節子のことを何も知らなかった。昨年渋谷のシネマヴェーラ岡田茉莉子特集を見たとき、小津安二郎の撮った「秋日和」に、初めて見るが何か存在感のある女優が主演していた。それが原節子だった。
 1960年に封切られた「秋日和」では原節子も40歳だった。その年齢では無条件に美女だと崇めることは難しい。たぶん20歳くらいから見てきて徐々に年齢を増していきその美貌が輝いて、やがて少しずつ加齢とともに輝きが失われていくのに付き添っていったファンなら別の印象を持つのかもしれないが。
 貴田庄の伝記は時系列に沿ってていねいに書かれており、原節子のことを何も知らない者にも、伝説の女優のことがよく分かった。そういう意味ではよく書けた伝記だと思う。ただ少々の不満はこの伝記の文体に対してだ。分かりやすい言葉で淡々と書かれている。文章がやさしすぎる。もう少し何か屈折があってもよかったのではないか。
 原節子は現在90歳で医療用施設で存命だという。若い頃からの映画を見直してみたい気がする。

原節子 あるがままに生きて (朝日文庫)

原節子 あるがままに生きて (朝日文庫)