山本弘「削道」について訂正

 山本弘の作品をギャラリー戸村に搬入して、「流木」と「削道A」をよく見たら、先日書いた「削道」についての感想を訂正しなければならなくなった。

 同じ時(1978年)の個展に発表したやはり赤が主体の「削道A」という作品もある。

 「削道」とは辞書にはない言葉だが、「索道」なら「広辞苑」によれば「架空した策条に搬器をつるして人または物を運搬する設備。架線ともいい、鉱業・林業の運材施設としても利用」とあり、また「作道」なら「日本国語大辞典」によれば、「道を作ること。また、その道。つくりみち」とある。山本は若い頃山仕事をしていたことがあり、「索道」なら血の濁流を架線で渡るイメージだし、「作道」ならそこに新しい道を作っていく、血のような苛酷な世界に道を開いていくというイメージだ。「流木」の受け身の姿勢とは逆に能動的に働きかけている。
 しかし、また同じ個展に「削道B」という青が主体の作品も出品している。

 AとBの違いなのだから、これらは同一のテーマと考えるのが普通だろう。この混沌とした青い世界は、血の世界が同時に、何か全く違う別の世界でもあることを意味しているのだろう。

「流木」の赤と「削道A」の赤は別物なのだった。「流木」の赤はまさに血の色だが、「削道A」の赤は赤茶色で、これは山肌の赤土の色に似ている。すると「削道A」は切り開いた山に新しい道を作っていくことをテーマにしていると考える方が良いと思える。
 そう考えると、「削道B」の青は灌木や小低木に覆われた山林のイメージかもしれない。あるいは川を渡る架線から見下ろした波立つ水面なのだろうか。今回展示しなかったが、AやBの他に少し大きい「削道AB」(30F)という作品もある。色彩は「削道A」と共通で、赤茶けた斜面に道を切り開いていく感じが強くする。
「削道B」はすでに販売済みでもう見ることができない。
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 今日から山本弘展が始まる。
「流木」と「削道A」が展示されている。
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山本弘
2011年2月7日(月)〜2月19日(土)
11:00〜18:30(土曜〜17:00)
日曜・祝日休廊
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ギャラリー戸村
東京都中央区京橋2-8-10 丸茶ビルB1
電話 03-3564-0064
http://www.gallery-tomura.com/