西村亨「源氏物語とその作者たち」(文春新書)を読む。源氏物語の作者は紫式部だったじゃないか。そのことに疑問はないが、多くの者たちが書き入れをしたり、書き加えたりしている。西村は紫式部ではありえない登場人物の年齢の錯誤など、内在的に矛盾を指摘するなどして、証明してみせる。源氏物語の成り立ちや構造などがよく分かるようになっている。西村は物語成立の環境や、書き加えた者たちまで推測している。それがとても説得力があるのだ。
私は知らなかったが、西村亨は満84歳になる国文学者で、折口信夫の直弟子でもある。慶應義塾大学の名誉教授なのだ。優れた学者が一般向けにやさしく書いたとき、こんな魅力的な本ができあがるのだ。

- 作者: 西村亨
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/03/20
- メディア: 新書
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