多剤耐性菌アシネトバクター

 複数の抗生物質が効かない多剤耐性アシネトバクター菌の感染が各地の医療機関で相次いでいる。どんな抗生物質に対しても耐性を持っている病原菌だ。病気に対して現代の医学が対応できない。発病したら死を待つだけだという。それは悲惨な状況だ。結核コレラ、ペストを克服した人類に大きな壁が立ちはだかったのだ。
 これについて私は天才バカボンのパパに倣って「これで良いのだ」と言いたい。人は死なない方向に科学を進めてきた。事故や病気、争いなどで安易に死なない方向へ進化してきた。それは良いことだったのだろうか。人は死んではいけないのか。死ぬべきではないのか。しかし、どのようにあがいても人は死ぬのだ。
 残された者にとって、家族、友人、恋人、知人の死は悲しい。辛いことだ。しかし、だからと言って死を回避すべきものだと捉えるのは正しいことではないのではないか。それでなくても地球の人口は増え続けている。生物はもともと死ぬようにプログラムされているのではないだろうか。
 そう考えると、アシネトバクターの出現は悪いことではないのではないか。薬石効なく亡くなってしまうのだから、それはもはや諦めるほかないのだから。
 人は死ぬべきなのだ。医学はあくまで死に対抗するが、そしてそれは崇高であると思うのだが、死との戦いは決して勝つことができないものだ。それはそれでいいのだと思う。